私は、彼の気持ちに気づいていた。かなり前から、そしてずっと。彼自身はその気持ちを隠していたようではあったが(笑)。
でも、本当に「いい人」だった。気配りができて、優しく、何より困ったときには必ず頼りになる。少し喧嘩になっても、感情的にならず、しっかり話し合ってくれて、私の価値観も大切にしてくれた。本当に、まるでお兄ちゃんのようで、家族みたいな存在だった。だからこそ、告白されたとき、驚きと共に混乱してしまった。
別に嫌いではない。むしろ、彼のことが大好きだった。他の男と違って、変なこともして来ない。終電前には帰してくれるし、体調が悪い時も気遣ってくれる。だけど、彼氏としてのトキメキは、どうしても感じなかった。
それでも、私は彼の優しさに甘えていたことがあったと思う。ラインの返事をどう返すか迷っていたが、素直に思っていることを言って、これからも友人として仲良くしていきたい、そう送ろうと決意した。そしてその矢先、親友から連絡が入った。「彼が自殺した」と。
私にも責任がある。心のどこかで気づいていたからこそ、もっとしっかりと向き合うべきだった。彼がそこまで愛してくれたことは、純粋に嬉しかった。でも、彼がすべてを背負い込んでしまうその姿を見て、私は完全に心を開くことができなかった。安心はできるが、苦しそうだった。自分に酔っているように感じた。そして自分を攻める姿が、ダサいと思ってしまった。本当に最悪な言い方ではあるが、あの告白を断って良かったと思ってしまう。付き合ってから、勝手に自殺されては、まるで私が悪者になってしまう。
それでも、彼の優しさ、尽くしてくれたこと、そして私にとって大切な楽しい日々をくれたことに、心から感謝している。全てが宝物だ。だけど、人生は進んでいく。後ろを振り返ってばかりではいられない。
今日、私は結婚する。本当に心から大好きと思える人と。私の人生には、彼との未来が描かれている。登場人物には、私と彼だけ。きつい言い方だけど、君じゃない。だから、ごめんね、本当に。
私は都合のいい女かもしれない。
でも、天国にいる彼が、私の幸せを心から祝福していることを、信じている。
だって彼は、いい人。いい人止まりだから。