2024年4月。僕は精神的に疲れていたのだろう。それに加えて、幸運にも適職に出会うことができた。転職を決め、東京に戻ってきた。青森も好きだったが、やはり元々寒さに弱い身体には厳しかった。時間が経つうちに、東京で少しずつ回復していけばいいと思った。そして、自分に合った仕事で存分に働けばいい。毎日を丁寧に過ごしながら、心を取り戻していった。
そして、それは突然だった。あの親友の元『彼女』から連絡が来た。いつもなら、僕から連絡をしない限りは音沙汰がないのに。少し驚きながらも、電話に出ると、彼女は泣いていた。
詳しく話を聞くと、親友の元『彼女』と『親友の元彼女の親友』の写真がディープフェイクで使われていたという。2人はそのことに困り、しかも誰にも相談できずにいた。警察に通報しても、彼らは基本的に何もしてくれない。その時、2人とも彼氏とも別れた後であったこともあり、頼れる相手は僕だけだったようだ。
僕は電話越しに親友の元『彼女』を励ましつつ、胸の中で少し嬉しさを感じていた。頼られたことが。僕は自分が最悪な性格だという自覚がある。2人が困って僕に頼ってきたのに、それをチャンスだと思ってしまった自分を、どうしようもなくクソだと感じた。それでも、どうしても彼女たちの力になりたい一心で、必死に動き始めた。
結局、犯人の特定には至らなかった。だが、弁護士と相談し、いくつかの策を講じることができた。結果的に被害は最小限に抑えることができたが、2人の精神的なダメージは大きかった。それを見て、少しでも元気を取り戻してほしいと思い、食事に誘ったり、プレゼントを贈ったりと、できる限りのことをした。そして、気がつくと、貯金を崩し始めていた。