11月。仕事は大変だったが、何とか生活はできていた。いや、頭ではそう思いつつも、心の中ではだいぶ疲れがたまっていたかもしれない。期待された分、いきなり大きなお客を担当することになった。だが、12月のノルマ達成が厳しく、毎日ハラハラしながら飛び回り、頭を下げる日々が続いていた。いくら有名企業に勤めていても、神様のような存在であるお客様の前では、僕たちはただのゴミくずに過ぎない。特に若手は。
そんな日々の中で、唯一の息抜きはネットの世界だった。友人たちのキラキラしたインスタグラムのストーリーを見て、素直に「いいな」と感じていた。その時、ある投稿が目に留まった。
「これ、青森だ」
プロフィールを確認すると、あの親友の元『彼女』だった人の名前だ。
その瞬間、居ても立ってもいられず、すぐに連絡を送った。
「青森に来ているの? もし来ているのなら、飯でもどう?」
もちろん、友人としての気軽な提案だった。
久しぶりの連絡に、彼女も喜んでくれている様子だった。しかし、返事は一言だけだった。
「ごめん、新しい彼氏に会いに来ているから、無理かな……。彼氏、青森配属で……」
その言葉を聞いた僕は、またいつものように大人の対応をするしかなかった。