11月中旬。『親友の彼女』からラインが届いた。
あの日、何となく打ち解けた流れでラインを交換していた。彼女は「こんな素敵な異性の友達ができたのは初めて」と喜んでいたけれど、僕は浮かれそうになる自分を抑え、良き「彼氏の友人A」に徹することにした。だから、やりとりはどこか軽いものだった。日常の何気ないことを話す、気を張らないダラッとしたやりとりが続いていた。
そんなある日、突然彼女が言った。
「紹介したい人がいるの」
その言葉に、一瞬戸惑った。誰を? どうして僕に?
紹介されたのは『彼女の親友』だった。最近彼氏と別れたばかりで、新しい出会いを探しているらしい。『親友の彼女』曰く、僕のおもてなしに感銘を受けたのだという。僕を「いい人」と思ってくれたらしい。
正直、胸の奥が少しだけ締めつけられた。僕の中で芽生えた淡い感情は、そこで終わったのだと悟ったからだ。しかし、その気遣いは素直に嬉しかった。彼女が僕のことを「誰かに紹介したいと思える人」と見てくれたのだから。
僕は少し複雑な思いを抱えつつも、その紹介をありがたく受け入れることにした。僕の初恋はここで幕を下ろした。
11月下旬。『彼女の親友』も美人だった。そして、性格も驚くほど良かった。話していると気が合うし、会話のテンポも自然と合う。そんな心地よさがあった。だから、会うたびに少しずつ親しくなり、その後も何度か一緒に遊んだ。
そして迎えたクリスマスの夜。イルミネーションがきらめく街を歩いた帰り道、彼女がふいに立ち止まった。少しだけ申し訳なさそうな表情で、言葉を選ぶように口を開いた。
「ごめん……。私たち、友達のままのほうがいいかもしれない」
その言葉は、冷たい冬の風のように、静かに僕の胸に刺さった。
また選ばれなかったのだと思った。でも、目の前の『彼女の親友』は、どこか晴れやかな表情を浮かべていた。
「でもね、こんなに気の合う異性の友達ができたの、すごく嬉しいの」
その笑顔に、僕は何も言えなかった。これが正しい関係なのだろう。僕の淡い期待はまたしても届かなかったけれど、これでいいのだと思うことにした。
家に帰ると、深い疲れを感じてそのままベッドに横になった。クリスマスの夜は、ただ静かに過ぎていった。