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極道という生き方-12



「人間、死ぬ時は何したって死ぬ。モチ食うたかて運が悪きゃ死ぬやろ」


龍二はこの場面で竹内久正の言葉を思い出す。

そして自分の拳を見て思う。

(結局はこれなんだよな…。)

ふと笑みを浮かべた龍二はゆっくりと木下の前に歩み寄る。

「ほう、いい根性だ。」

木下がそういうと龍二の顔面に右フックを入れる。

後方に吹き飛ばされる龍二だが必死に踏ん張る。

そして再び木下に近づき対峙する。

「どうした?こいよ!!」

木下の言葉に誘われるように渾身のスマッシュをお見舞いする。

少したじろいだ木下だが一歩も引かずに同じく右のフックを入れてくる。

このパンチは脳震盪を起こすほどの破壊力。

しかし龍二も一歩も引かずに堪える。

この渡世の世界は舐められたら終わり。

衝撃で視界がゆがむ中、龍二は木下の顔面センターにストレートをぶち込む。

一歩右足を後方に下げ踏みとどまる木下。

「さっきはバカにしてすまなかったな。お前は本物の極道だ。」

木下が龍二を認めたうえで、こめかみにフックを入れる。

さすがに効いた龍二は二歩下がって踏んばる。


殴り合い。


これこそタイマンの神髄である。

二人は本物の殺し屋であり極道だ。

だからこそ王道の殴り合いという戦いで決着をつける決断をした。


(もう限界だな…。おい、榊原翼…。お前もちょっとは働けよ。)

龍二がそう脳内でつぶやいたとき右手に違和感が走った。

まるでハントのように拳が青白く光を放った。

(そうだな…。お前も一発入れたいよな。)

龍二は笑顔になっていた。

初めて翼と共に戦うのである。

「さあ、お前のすべてをぶつけろ!!」

木下が挑発する。その顔も笑顔である。

最強の極道が命を賭けた殴り合いの終焉を招く。

木下は拳を振りかざし、龍二も低い体勢から拳を打ち上げる態勢に入った。


クロスカウンター。


お互いが同時にパンチを撃ち込むハイリスクハイリターンなカウンター合戦。

木下のストレートが龍二の頬をかすめる。

そして龍二と翼の渾身のパンチが木下のあごを捉える。

青白い炎のような拳は顎をアッパーで振り抜いた。

龍二の拳が砕ける感覚と、木下の顎が折れるニブイ感触。

木下は片膝をついて大量の血を吐いた。



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