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極道という生き方-10



【いや、意味が分かんねぇんだが…。】

龍二が問う。

「もうすぐ木下が目覚める。

この時のためにあなたは榊原翼に召喚されたんだよ。

さあ、戦って木下を殺してくれ。

そうすれば榊原翼の残留は解消され、私は消えることができる。」

DGはそういうと黒い霧に包まれ、一瞬姿を消した。

そして霧が消えた後に、再びDGの姿があったが、明らかに目つきが違う悪意に満ちた木下が現れた。

「この野郎…また人格が入れ替わったのか…。

うっとおしい野郎だぜ。」

木下はゆっくりとあたりを見渡す。

「俺の舎弟どもがあっちゃこっちゃで死んでんだがお前がやったのか?」

木下の問いに龍二は体中の毛が逆立った。

(なんておぞましい気概なんだ…!!)

木下の放つまるで絶望を感じさせるオーラに龍二は危機感を覚えた。

たかがひとりのヤクザ者にこんなにも恐怖心を感じたことは今までなかった。

それほど木下の放つ真っ黒いオーラは龍二に衝撃を与えるものであった。

これまで同じ組織に属していながら接点を持つことなく交わることもなくこれたことにある意味納得してしまう龍二。

(こりゃ次元がちがうじゃねえか、ばかやろう…!!)

龍二は完全に木下の放つ気概にドン引き状態であった。

(こいつは本当に人間か!?この世のもんとは思えない圧力は何だ!?

蛇に睨まれたカエルじゃねえか!?

戦えんのか?おれはこいつと今から戦うのか?)

気持ちも体も前に進めない龍二に、

「お前が例のパーカー野郎か?

よくも俺の前に立てたもんだな。

死ぬ準備はできてるんだろうな?

このやろう…ただじゃ死なせねえぞ。

地獄の方が楽に感じるぐらい大殺界を教えてやるからな…。

この世に生まれてきたことを後悔しろ…このやろう…!!」

木下が恫喝する。

龍二は木下が発する気概オーラで体が動かない。

(くそ…!!ビビってんのか?俺はビビッてるから体が動かんのか?)

龍二が自分に問う。

「お前…たしかあの時のガキ…。生きてやがったのか?」

木下の言葉に龍二はパーカーのフードをつけていないことに気づいた。

龍二はその言葉にも反応して足が震えて動けない。

だが即座にこれは氷室龍二の思考ではなく、脳みその奥底で恐怖に震える榊原翼の臆病な心がそうさせていると確信した。

なぜなら龍二は先ほどから言いたいことを言われて心底腹が立っていることを実感しているからである。

(榊原翼…腹決めろや…お前が望んだことやろが。

俺も一緒に戦う。だから根性見せろや。なあ、榊原翼!!)

龍二の問いかけに自然と体の震えはなくなった。

(よし、最後の戦いじゃ!!派手に行こうぜ、翼!!)

龍二はそう鼓舞してファイティングポーズをとり臨戦態勢に入った。



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