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極道という生き方-9



到着したのは郊外の廃工場。

運転手の後頭部に一発撃ち込み車を降りる。

そしてそれが最後の弾だったことを確認して拳銃を捨てる。


(またここか…。)

龍二はため息をつく。

この廃工場は龍二が黒川に殺された場所。

(これも運命か。)

そう解釈した龍二は奥へと歩みを進める。

そして異変に気付く。

山崎組の構成員たちが倒れている。

「邪魔ものは排除しておいたよ。」

その声の主はDG。


【久しぶりじゃねえか。

てめえこんなところでなにやってんだ?】

龍二が脳内コンタクトで問う。

するとDGの背後から悠亜が飛び出して龍二に抱き着く。

「翼くん、助けに来てくれたのぉ?

うれしいぃ~~!!」

力いっぱい抱き着く悠亜。

怪我はしていないようで安心する。

【てめえが助けてくれたのか?】

龍二がDGに問う。

「氷室さん、勘違いしないでください。

私は榊原翼の意志を尊重して動いています。

結果的に彼女に危害が加えられなかっただけで、そこは気にして動いていません。」

DGの言葉に、

【それでも礼を言う。

結果的にとはいえ、こいつを守ってくれてありがとう。】

龍二が本音を伝える。

「さて本来の私の仕事をするとしましょう。

榊原翼の意志である木下保一への復讐。

こうしてあなたにその場を提供したのです。

頼みましたよ。」

とDGが笑顔で言う。

【ひとつ疑問があったんだが、お前ほどの強さがあれば自分で木下を殺るぐらい簡単だろう?】

龍二が問う。

「それではダメなんです。

榊原翼のその体で実行をしなくては、復讐になりません。


それに…自分で自分を殺せないでしょう…?」


DGがそう言い放った後、体を黒い霧が巻き付くように渦を巻く。

更に禍々《まがまが》しいオーラを発し、龍二は不快な動悸に襲われる。

【DG…どういうことだ!?】

ひどい頭痛もこの悪意の塊のようなオーラが原因なのが理解できる。

悠亜はすでに気を失っている。

するとDGは低い声で、

「榊原翼は死ぬ間際、強い怒りと恨みを抱いていた。

これからの人生を奪われ自分にはもう未来がこないと悟ったとき、大きな思念をある男に向けた。自分を殺した憎き男。

それは強い怨念にも近い残留思念。

それを向けられた男の中にその思念が植え付けられ、そして人ならぬもうひとりの人格と共存を余儀なくされた。

あなたの目の前にいる男…。

そう、わたしが木下保一きのしたやすかず

榊原翼の憎き仇です。」

と声を出した。




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