到着したのは郊外の廃工場。
運転手の後頭部に一発撃ち込み車を降りる。
そしてそれが最後の弾だったことを確認して拳銃を捨てる。
(またここか…。)
龍二はため息をつく。
この廃工場は龍二が黒川に殺された場所。
(これも運命か。)
そう解釈した龍二は奥へと歩みを進める。
そして異変に気付く。
山崎組の構成員たちが倒れている。
「邪魔ものは排除しておいたよ。」
その声の主はDG。
【久しぶりじゃねえか。
てめえこんなところでなにやってんだ?】
龍二が脳内コンタクトで問う。
するとDGの背後から悠亜が飛び出して龍二に抱き着く。
「翼くん、助けに来てくれたのぉ?
うれしいぃ~~!!」
力いっぱい抱き着く悠亜。
怪我はしていないようで安心する。
【てめえが助けてくれたのか?】
龍二がDGに問う。
「氷室さん、勘違いしないでください。
私は榊原翼の意志を尊重して動いています。
結果的に彼女に危害が加えられなかっただけで、そこは気にして動いていません。」
DGの言葉に、
【それでも礼を言う。
結果的にとはいえ、こいつを守ってくれてありがとう。】
龍二が本音を伝える。
「さて本来の私の仕事をするとしましょう。
榊原翼の意志である木下保一への復讐。
こうしてあなたにその場を提供したのです。
頼みましたよ。」
とDGが笑顔で言う。
【ひとつ疑問があったんだが、お前ほどの強さがあれば自分で木下を殺るぐらい簡単だろう?】
龍二が問う。
「それではダメなんです。
榊原翼のその体で実行をしなくては、復讐になりません。
それに…自分で自分を殺せないでしょう…?」
DGがそう言い放った後、体を黒い霧が巻き付くように渦を巻く。
更に禍々《まがまが》しいオーラを発し、龍二は不快な動悸に襲われる。
【DG…どういうことだ!?】
ひどい頭痛もこの悪意の塊のようなオーラが原因なのが理解できる。
悠亜はすでに気を失っている。
するとDGは低い声で、
「榊原翼は死ぬ間際、強い怒りと恨みを抱いていた。
これからの人生を奪われ自分にはもう未来がこないと悟ったとき、大きな思念をある男に向けた。自分を殺した憎き男。
それは強い怨念にも近い残留思念。
それを向けられた男の中にその思念が植え付けられ、そして人ならぬもうひとりの人格と共存を余儀なくされた。
あなたの目の前にいる男…。
そう、わたしが
榊原翼の憎き仇です。」
と声を出した。