走り始めた車の後部座席で龍二は怒りで震えていた。
すると助手席の男のスマホが鳴る。
一言二言話した後、それを龍二に渡す。
スマホを受け取り耳に当てると、
「翼くん…。」
か細い悠亜の声が聞こえる。
(悠亜!?大丈夫か!?)
声が出せないジレンマをこんなに感じたことはない。
「翼くん…ごめんなさい。
悪魔に捕まっちゃったぁ。」
と言ってテヘッと笑う。
(悪魔?なにいってんだ?)
悠亜の様子からすると暴力は受けていないようでひとまず安心する。
すると助手席の男が無理やりスマホを取り上げる。
そして、
「お前のスマホ出せ。」
と命令してくる。
龍二は自分のスマホを左手で取り出し助手席の男に渡す素振りを見せて、隣の追跡者の拳銃のリボルバーを右手で握り発砲を封じて顔面にパンチを見舞う。
その後、間髪入れず拳銃を奪い助手席の男の眉間に一発発射。
続けざまに隣の追跡者の腹部に3発撃ちこむ。
そして運転手の男の甲頭部に拳銃を当て、無言で目的地へと案内するように促す。
さらに肘で窓ガラスを割り、自分のスマホを窓から捨てる。
この地点でスマホを捨てておけば紅蘭を見つけられるはずだ。
(悠亜…待ってろ、すぐに助けてやるからな!!)
龍二の頭は悠亜への心配でいっぱいになっていた。
(ちっ…16歳の小娘に惚れちまうとはヤキが回ったもんだぜ。)
自分の気持ちに素直になったとき、龍二はこれが最後の戦いになると確信した。