(このババアは何を言ってるんだ…?)
年老いた女が涙で顔をグシャグシャにして天井に向けた手を強く握る。
そして傍らにいる医師らしき白い服を着た男が驚いた声を発した。
「信じられない…。もうすでに心肺停止状態で呼吸器も外しているのに…。
死亡確認も間違いなかった…!!こんなことってあるのか…!?
す…すぐ戻ります!」
そういうと男は急いでその場を去った。
ますます訳が分からない龍二は必死に声を出そうとしたがうまくいかない。
口をパクパクさせている龍二に、
「ツバサ、2か月間ずっと目を覚まさなかったのよ。
お医者さんはもうダメだって言うし…おばあちゃん…どうしたらいいかわからなくなって…でもよかった…。」
再び泣きながら話す女。
龍二は混乱していた。
すべてが理解できない状況下、体も思うように動かず声すら出ない。
(俺はどうなってしまったんだ!?死んだはずじゃなかったのか?)
冷静さを取り戻せない龍二は、動かぬその体に泣いてすがる女の喜ぶ声をただ聞く事しかできなかった。