龍二は暗闇をさ迷っていた。
死への旅が始まった…と龍二は穏やかな気持ちになっていた。
激動の日々だった。
【荒ぶる獣王】の異名を誇った武闘派の竹内の元、様々な抗争を先頭で戦ってきた。
「子供がいると、この世にしがらみを残す。極道に女房、子供は不要」
という竹内の信条から、龍二も家庭を持たずに組に尽くしていた。
九州制圧の先陣も龍二が裏から手を回し成功させた。
日本最大の勢力を誇る暴力団、極東一家の3代目組長・岡田雄一の死去に伴い空位となったトップの座に代行という形で山崎組・山崎挟一組長が襲名。竹内は若頭に就任し、それによって竹内組は実弟の竹内剛が組長を引き継ぎ、龍二が若頭へとなった。
この頃から龍二は組織の裏の顔としての仕事がメインとなる。
ヒットマン。殺し屋だ。
組織に邪魔な者を密かに殺し、証拠も消す。
親である竹内のために自ら排除に動く。
こうやって龍二はこの世界で生きてきたのだ。
今年40才になり、竹内が4代目に襲名しさらにその戦いを影から支えてきた。
しかし、この襲名に異論を持った内部幹部たちが極東一家から離脱。一水会を立ち上げクーデターを起こし、組を割った【跡目問題】に発展し、龍二は4代目側の重要人物として殺されたのである。
一水会には三代目時代の直参とその傘下が合流し、山崎を頭≪かしら≫に本家に宣戦布告。
激しい抗争へと発展していった。