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1時

 1時。

 はい来ました、午前1時。

 脳内の理性がカタカタ音立てて崩れていく時間帯。

 夜中テンションがエモとお笑いの間をフラフラして、

 気がつくと「俺って……誰なんだろ……」とかつぶやいてるやつ。ヤバい。

 そんなとき、急に──

 エモの神、降臨。

「やっぱ泣ける話だよな……」

 タイムトラベル。死んだ恋人と再会。そういうやつ。

 間違いなく名作カテゴリ。

 でも、それを俺が書くってなると、なんか違う。うん、なんか違う。

 たぶん読者よりも俺の寿命が縮む。

 でもな、ここで踏ん張らないと、俺は一生“書けるふりしてるだけマン”だ。

 一応、考える。考えるだけタダだから。

 で、浮かんだのが──

「例えば……創業者の幽霊が見えるヒロインの社員がいて、その創業者とヒロインが力を合わせて、会社を再建していく。で、最終的にヒロインは、幽霊である創業者に恋をして──成仏させる」

 ……うわっ。

 うわっ。(2回目)

 なにこれ。恋する地縛霊?

 てか再建ってなに? 創業者、倒産見届けた後に成仏したん?

 それか、やり残したのが中期経営計画って、死んでまで働かすなよ。

 しかもラストが恋して成仏。

 ウィスパーしながら決算書作る恋愛物語、誰が読みたいんよ。

 需要、どこ。Amazonカテゴリ「ビジネスラブ幽霊」とか、あるの?

 もはやジャンル迷子どころか、ジャンル、失踪。

「……エモいのかホラーなのか、わからん」

 って、わからないのはお前自身だ。

 自分で書いてて、自分が一番迷ってる。

 そして静かに悟る。

 たぶん俺が一番、成仏した方がいい。


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