静かな洞窟の中。
『全てを見た魔女』こと、ゼナイド・クララックは一人封印されし『サテュロス』の前で佇んでいた。
「哀れなものねぇ……。元は同一の神だったはずなのに」
《故に、封印せねばならなかった》
いつの間に現れたのだろう。サジタリウスが彼女に近くへ行く。
「あらあら? 神様が
口元だけ笑う彼女に、サジタリウスは顔色一つ変えずに答える。
《聖女よ。選定の意味を正しく認識されていること、謝意を述べよう》
「ふん。そういう性格に設定しているくせに、何を今さら……」
咎めるように言う彼女に、サジタリウスが更に続ける。
《この世界に生きし者の運命也》
言いたい事だけ告げ、サジタリウスは去って行った。それを見送ると、ゼナイドは魔女帽子を深く被る。
「わかっているわよ。この世界は……
そうぼやくと、ゼナイドは再び自分の管轄区域へと戻って行く。そう、それが彼女の運命。『勇者』として選定された者を導くための……駒としての己を認識しながら――