「ジュリアナちゃん。この娘知り合い?」
[知らない。ただ、ワチキを封印した魔女の手下みたいね]
「マハラジャ様の前に連れて行く前に少し痛めつけてやるわ!〝
プリティ・プリプリメーラの持つステッキから、光の玉が放たれた。
「うわ!危ね!」
陣生(魔法少女)は、その玉を間一髪の所で避ける。
〝ボカーン!〟
光の玉が当たった庭園の木は、へし折れてしまった。
「マジか!?あんなの当たったらシャレにならないぞ!ジュリアナちゃん、こっちも魔法使えないの?」
[あー右手見てみ]
「あれ?いつの間にか、いかにも魔法少女が持ってそうなハートのステッキを持ってる?よーし、せっかく昔から好きだった魔法少女になれたんだ!パパ張り切っちゃうぞ!行くわよ♡悪の魔法少女!」
まるで読者の方に向けた説明的な台詞を言いながら、陣生(魔法少女)はノリノリになって両手でステッキを握る。
「それで、どんな魔法使えるの?火炎系?氷系?」
[何も使えないよ。だって、魔法使うには精気が足りないもん!ほら?RPGでもMP0の勇者は魔法使えないでしょ?それと同じものよ]
「じゃあ、何でこのステッキを持たせたの!?意味無いじゃん!」
[雰囲気出そうと思って。オジサン楽しそうだったじゃん♪]
「何をブツブツ言ってる?次は避けられないぞ」
いつの間にか、目の前まで接近していたプリプリメーラが、ステッキの先端を陣生(魔法少女)の顔面に向けていた。どうやら零距離射程で魔法攻撃するつもりのようだった。
〝プ~ン〟
「う!臭い!ジュリアナ!
プリプリメーラは、彼(彼女)の体から放たれる悪臭に耐え切れず鼻をつまみながら離れた。
「あ、そうか。この体ゲロ臭かったんだ」
[これよ!オジサン……って、名前何て言うの?]
「
プリプリメーラに本名を聞かれたくない陣生(魔法少女)は、小声で呟く。
[
「え?何で?」
[いいから早く!]
「ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!」
[そりゃラマーズ呼吸法でしょ!それにお腹の力も足りないわよ!深呼吸は普通でいいから、
「魔法少女が、1本グソとかアナル言うなー!スーハー!スーハー!これで良い?」
〝クサクサプ~ン〟
「う!な、何だ?離れてても、この
「君、大丈夫?」
陣生(魔法少女)は、彼女の事が心配になり近寄っていく。
「く、来るな!来るなー!ゲロ臭いのよ!うっ!
プリプリメーラは、
「ウプ!こ、これで勝ったと思っちゃダメなんだからねー!」
そう言って、プリプリメーラは空を飛んで、陣生(魔法少女)の前から去っていった。
「すげえ。
[一応、魔法だよ。ワチキの
「全然可愛くないよ!なに?〝クサゲロプ~ン〟って!?ゲロ要素隠す気ゼロじゃん!しかも漢字表記だと〝悪臭吐瀉物魔法〟だからね?もう読ませるだけでテロだよ!
[それよりも陣ちゃん。ワチキ封印魔法の影響が残ってるみたいで、完全に実体化出来るには人間の精気が足りなすぎんの。だから、陣ちゃんも
「え?どのくらいの人数分必要なの?吸われた人は大丈夫なの?」
[えっとね。
「そんなのダメー!魔法少女は正義のために戦ったり、困ってる人を助けるもんなの!精気が欲しけりゃ、俺の精気を分けてやるから!」
[えー?
「俺の体で良ければ、
[本当?ゲームとかパチンコとかして良い?]
「え?まあ、少しくらいなら」
[やったー!それなら、しばらくは陣ちゃんの体で我慢してあげる♪これで『バイオハ〇ード』がプレイできるわ!かゆうまぁぁぁー!]
こうして、陣生と吸精鬼な魔法少女ジュリアナの奇妙な共同生活が始まるのだった。
一方、その頃……。
ここは、陣生の近所にあるマンションの一室。プリプリメーラが、和室に置いてある漬物樽の前に跪いていた。
「申し訳ございませんマハラジャ様。ようやくジュリアナの魔力を察知したので、御身の封印を解かせるため、ここに連れてこようとしたのですが失敗しました」
[焦る必要はない。
樽の上の紫色の漬物石が輝くと同時に、プリプリメーラの脳内にマハラジャの声が聞こえる。
「はっ!……あのーマハラジャ様、プリプリプリって呼ぶの止めて頂けませんか?何かウンコ漏らした時の音みたいな気がして」
[可愛らしいと思うんだがの?ところで、プリプリプリよ。どうして妾は漬物樽の上に置かれてるのだ?]
「プリプリプリって呼ぶなって言ったばかりでしょーが!だって、マハラジャ様は漬物石にピッタリだから、美味しい漬物出来るんですもーん」
[そうか美味しいのか。封印されても流石は妾じゃな。そうじゃ『ビートた〇しのお笑いウルト〇クイズ』の放送まだかの?]
「もうとっくに終わりましたよ!マハラジャ様!ワタシ様、何度も言いましたよね?認知症ですかー!」
〝ピンポーン〟
その時、室内にチャイムが鳴った。
「誰だ?夜中だぞ?」
インターホンのカメラで確認すると隣人の独身男性の
「また
プリプリメーラは、そう言って人間界での姿である〝
「隣田さん?こんな時間にどうしたんですか?」
エリーザは、インターホンカメラ越しに隣田に用件を尋ねる。
「エリーザちゃん遅くまで仕事お疲れ様!夕飯作りすぎたから、お裾分け持ってきたよ」
隣田は彼女に気があり、しょっちゅうお裾分けを持ってくる。
断っても玄関から動かない事を知ってたので、彼女は扉を開けた。
「今日は〝
そう言って、隣田はタッパの蓋を開けてエリーザに、もんじゃ焼きを見せる。
(こ、この野郎ー!よりにもよって〝
エリーザは、両手で口を押さえて吐くのを我慢していた。
「エリーザちゃん、顔色悪いよ?」
隣田が、エリーザに顔を近づけてきた。中年男特有の加齢臭が、彼女の鼻に突き刺さる。
(臭いのよ!もうダメ!
「ウボエエエー!」
エリーザは、
「ぎゃああー!ありがとうございまーす!お、オエエエエー!」
隣田は悲鳴を上げた後、お礼を言って〝もらいゲロ〟をぶちまける。
「ご、ごめんなさーい!」
エリーザは、一言謝ると扉を閉めて鍵をかけた。
(あれ?タッパの中の
そんな事を考えながら、エリーザは残りゲロを吐くためトイレに直行しちゃうのだった。
……これにて第1章は終幕である。分かってる!登場人物たち
書けば書くほど、読者の数が減りそうな不安を感じながらも、次章も書く予定なので読んでもらえると、ゲロ吐いて喜ぶのでよろしくお願いしたいのである。