目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第9話 お兄ちゃんが来た

 そんなこんなで、楽しい日々を過ごしていた魔王だったが。

 来客はまたも突然にやってきた。


「魔王様ぁ、またどっかの勇者パーティ来てるぜ」


 ランドールが報告にやってきた。

 首輪に鎖を付けたガイルを犬のように連れている。

 元戦士は筋肉が衰えることなく、屈強な身体のままだ。


 性玩具にした魔法使いは、あっという間に壊れたので、餌に回した。

 今は玩具がいないから、ガイルを時々、魔王軍の皆の玩具にしている。

 頑丈な戦士は、どれだけ回されても壊れない。輪姦用には良い性玩具だ。


「シャムルたちが来たばかりなのに、頻繁だねぇ。何処の国の子かなぁ」


 魔王は魔鏡を開いた。

 三人組のパーティだが、魔王城まで来られたのだから、強いのだろう。

 如何にも勇者です、といわんばかりの端正な顔の青年が、先頭を歩いていた。


「兄上……」


 魔王の腰に巻き付いてちんぽに頬擦りしていたシャムルが呟いた。


「シャムルのお兄さん? じゃぁ、シャムルとガイルのお兄さん?」


 魔王の問いかけに、シャムルの頷いた。


「リンデル王国の嫡男、時期国王候補と名高い王国最強の魔法剣士、ヘルクライン兄様です。正義感が強く悪を見過ごさない強さを持った人だから、私たちを連れ戻しに来たのでしょう」


 魔鏡の中の兄を眺めるシャムルの目は冷めている。

 魔印のせいではなさそうだなと、魔王は思った。


「そっかぁ、心強そうな顔しているよねぇ」


 心、というか、自分の価値観に自信を持っていそうな顔だ。


「とても強いですよ。……鬱陶しいほどに」


 シャムルの乾いた声には感情すら無い。


(魔印の縛りで淫欲以外の感情は、絞られているはずなんだけどなぁ)


 魔王は隣のガイルを眺めた。

 ガイルは魔鏡には目もくれずに、ランドールの股間に顔を埋めて、ちんぽをしゃぶることに夢中になっている。

 ガイルの首には魔印が一本、付いている。


(ヘルクラインをあんな風に言っているけど、シャムルもなかなかに役者というか。エッチ好きは魔印のせいだろうけど)


 魔王はシャムルの髪をサラサラと撫でた。


「シャムルは、魔族になりたいんだっけ?」


 魔王の問いかけに、シャムルは顔を上げた。


「はい! 魔族になって、魔王様のお役にたちとうございます」

「ならば、兄・ヘルクラインの心臓を喰え」


 シャムルの顔が一瞬、凍り付いた。だがすぐに、キラキラとした笑みになった。


「魔王様の御命令であれば、何なりと。魔族になれるのでしたら、いくつでも喰らいましょう」


 うっとりと嬉しそうに魔王を見詰めるシャムルの顎を撫で上げた。


「上手に喰えたら、魔族の核をあげるよ。魔印より確実に魔族になれる。シャムルが望むなら魔王の血の結晶をあげよう」

「血の結晶、ですか?」


 首を傾げるシャムルに向かって、ランドールが感心した声を上げた。


「へぇ、すげーじゃん。魔王様の血の結晶がもらえたら、魔族ン中でも側近の証だ。奴隷から大出世だな」


 シャムルが感嘆の表情になった。


「必ずや、ヘルクラインの心臓を喰って見せましょう。今の約束、お忘れになりませんように」


 シャムルの顔に氷のような冷たい微笑が浮かんだ。

 が、それも一瞬で、すぐに蕩けた笑みに変わった。


「魔王様の御側に居られるならば、何でも致します」


 シャムルが魔王の腰に巻き付いて、股間に顔を埋める。 


「じゃぁ、適度にHPとMPを削って、玉座の間に誘導しようか」


 シャムルの髪を撫でながら、ランドールを振り向く。


「適当にやっとくよ。後ろの二人は玩具にしていいよな。魔法使いがすぐ壊れたから、魔王軍に不満が溜まってんだよ」

「ヘルクラインだけ玉座の間に誘導できれば、残りの二人は適当に堕として遊んでいいよ」


 よっしゃー! とランドールが楽しそうにしている。


「魔王様に名前を呼んでもらえるなんて、贅沢な……」


 呟いたシャムルが、魔王の股間にぐっと顔を押し付けた。

 そんなシャムルを魔王は眺めた。


(さてさて、シャムルの狙いと本音は、どっちかな)


 魔王に堕ちた振りをして入り込み、王国最強の魔法剣士と共謀して、魔王を討つのが狙いなのか。

 鬱陶しい兄を排除するため魔王を利用したいだけなのか。

 他に何か、勇者としての狙いがあるのか。


(魔印の効果は薄まっていそうだから、既に魔王の忠実な奴隷ではなさそうだね)


 どちらにしても、醜い本音は面白い。

 ゲームを楽しむような感覚で、魔王様はワクワクしたのでした。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?