目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

12-7 フェス

 しばらくして、倒れていたVTuberたちが一人、また一人と起き上がってくる。

 相当なダメージを受けたはずのニニギも、ぐったりしながらも立ち上がる。


「みなさん、お疲れさま……そして、本当にありがとう。

 最後まで諦めずに戦ってくれたおかげで、異世界も……守られたわ。」


 拍手や歓声が周囲で起こる中、シャムは「ふん、別に大したことじゃないけどね」とそっぽを向く。

 だが、その顔には悔しさだけでなく、どこか吹っ切れたような穏やかな表情も見えた。


「配信をご覧の皆さん、こちらこそありがとうですにゃ。

 ……ところでニニギさん、せっかくこんなにたくさんのVTuberが集まっているんですから……?」


 ルナが微笑むと、ニニギも笑顔で頷く。


「ええ。皆さん、最後にやりましょうか。

 そう、VTuberフェスよ!」


にゃん民: やっぱりライブきたああああ

にゃん民: VTuberはやっぱライブよ!


 傷ついたVTuberたちも次々に配信画面を切り替え、ライブステージのようなセットを組み始める。


 フジワラは戸惑いながらも、地味に端っこで椅子に座り、投げやりに視線を落としていた。


「……俺は、とんでもないことをした…これから何をすればいい……?」


 ルナはフジワラへ近寄る。


「とりあえず、あなたも一緒に見ていてくださいにゃ。

 “推す”って、こういうことなんですにゃ。」


 そして始まった歌声とダンスは、炎や血煙に覆われた戦場を、一瞬でライブ会場のように変えていった。

 無数のライトが生成され、視聴者からは彩り豊かなスペチャが飛ぶ。


 気づけばフジワラは、ペンライトを持たされており、ぎこちないながらも振りはじめている。


 まさか魔王がサイリウムを振ってVTuberを応援する日が来るなんて――誰が想像しただろうか。




この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?