しばらくして、倒れていたVTuberたちが一人、また一人と起き上がってくる。
相当なダメージを受けたはずのニニギも、ぐったりしながらも立ち上がる。
「みなさん、お疲れさま……そして、本当にありがとう。
最後まで諦めずに戦ってくれたおかげで、異世界も……守られたわ。」
拍手や歓声が周囲で起こる中、シャムは「ふん、別に大したことじゃないけどね」とそっぽを向く。
だが、その顔には悔しさだけでなく、どこか吹っ切れたような穏やかな表情も見えた。
「配信をご覧の皆さん、こちらこそありがとうですにゃ。
……ところでニニギさん、せっかくこんなにたくさんのVTuberが集まっているんですから……?」
ルナが微笑むと、ニニギも笑顔で頷く。
「ええ。皆さん、最後にやりましょうか。
そう、VTuberフェスよ!」
にゃん民: やっぱりライブきたああああ
にゃん民: VTuberはやっぱライブよ!
傷ついたVTuberたちも次々に配信画面を切り替え、ライブステージのようなセットを組み始める。
フジワラは戸惑いながらも、地味に端っこで椅子に座り、投げやりに視線を落としていた。
「……俺は、とんでもないことをした…これから何をすればいい……?」
ルナはフジワラへ近寄る。
「とりあえず、あなたも一緒に見ていてくださいにゃ。
“推す”って、こういうことなんですにゃ。」
そして始まった歌声とダンスは、炎や血煙に覆われた戦場を、一瞬でライブ会場のように変えていった。
無数のライトが生成され、視聴者からは彩り豊かなスペチャが飛ぶ。
気づけばフジワラは、ペンライトを持たされており、ぎこちないながらも振りはじめている。
まさか魔王がサイリウムを振ってVTuberを応援する日が来るなんて――誰が想像しただろうか。