「グオオオオオオオオオオォ!」
断末魔を上げ、ドラゴンの身体は火花のような闇の粒子へと砕けていった。
最後に残ったコアが砕け散り、その奥から、人間の姿をしたフジワラが押し出されるように宙へ放り出される。
「うわああああ、嫌だ! 死にたくない……!」
絶叫しながら落下していくフジワラ。
ルナは背中の天輪を振るわせると、一気に高度を上げてフジワラのもとへと突進する。
「捕まえてみせるにゃ!」
風を切る音が鼓膜を打ち、フジワラの絶望の叫びが耳を塞ぐ。
しかしルナは恐れず、最後の瞬間にフジワラを腕の中で受け止めた。
「――配信は、ハッピーエンドじゃなきゃいけないんですにゃ!」
フジワラはルナの胸元にしがみつく形になり、こちらを見上げる。
「俺は……なんで……こんな……」
黒いオーラに蝕まれていたフジワラの目が、徐々に正常な色へと戻っていく。
フジワラの目には太陽を受けて光り輝くルナの顔が映った。
気恥ずかしくなり目を逸らすフジワラ。
「……これが、推す……ってこと、か……?」
わけがわからない、と言わんばかりに力が抜け、フジワラの身体は項垂れていた。
ルナは彼をしっかりと抱き、ゆっくり地上へ降りていく。
降り立った地面には、多くのVTuberが倒れ込んではいたが、息はあった。
ニニギが意識を取り戻し、ばえすぽっ!やシャムも生きている様子が見える。
「みんな……勝てた、にゃ……」
コメント欄でも大歓声が上がり、同接はさらに跳ね上がっていた。
こうして“魔王フジワラ”を滅ぼすことなく救い上げる形で、最終決戦は幕を下ろしたのである。