ルナがシャムの一撃を受けて倒れ込んだ瞬間、ルナ側の配信はぷつりと途切れた。
にゃん民たちは画面が真っ暗になったまま反応がなくなることに動揺し、SNSサイト「ツブヤイッター2」で情報収集を始める。
「ルナちゃん、大丈夫なのか!?」
「他のVTuberも異世界に転生しているって噂があるぞ?」
「虚猫シャムも配信してるらしい!」
そんな声が交わされ、噂が広がった結果、にゃん民たちは虚猫シャムの配信へと急行した。
一方、その頃、シャムの配信画面には、ゴスロリ服の黒髪猫耳、美しいがどこか陰気な表情のシャムが映っていた。
背景には崩れた世界樹の根元、そして気絶した美咲の姿が遠巻きに見える。
「みんな〜、今日もシャムのことだけ見てる〜?」
シャ民党員: もちろんだよシャムちゃん!
シャ民党員: 今日もかわいいよ〜♡
シャ民党員: シャムだけが至高だ!
シャムは鼻で笑うと、ふと溜息をつく。
「ねぇ、私思うんだ。
“にゃん民”ってファンネーム、元々私が使ってたんだけどさー、あの子勝手に使っててさ、マジ許せないんだけど〜」
シャ民党員: 本当なの?
シャ民党員: 許せねぇな!
シャ民党員: あいつがパクったのか!
「今日からうちのファンネームも“にゃん民”に戻そっかな〜」
シャムはニヤリと笑う。
カメラが引くと、倒れている美咲の姿が映る。
ぼろぼろのジャージ、ボサボサの髪、メガネに長身。
猫神ルナが絶世の美少女だったのに対し、中の人である美咲はごく普通の、いや疲れ切った大人の女性にしか見えない。
「猫神ルナ、かわいいガワだったけど、中身はこんなだっさいおばさんだったんだー
こんな人推してるとか……信じらんないよね〜」
シャ民党員: マジかよ…
シャ民党員: ダッセェww
シャ民党員: 幻滅だわ…
ちょうどシャムの配信にたどり着いた、にゃん民たちはこの光景を見て言葉を失う。
「嘘だろ……」
「ルナちゃん、こんな姿に……」
シャムはあざ笑うようにカメラを見据え、勝ち誇った表情を浮かべる。
「さーて、このおばさんはもうV人生終わったっぽいから、次にやって欲しいこと募集しまーす!」
シャムはファンから企画案を募る。
「それいいじゃん! じゃあいっきまーす!」
良さげな企画案があったのか、シャムはバイコーンに乗り込むと、エルフの里を後にするのだった。