「私の他にVTuberはいらないのよっ!」
シャムは狂気じみた目でルナに叫んだ。
溢れ出る憎しみが真っ直ぐに耳に刺さる。
まるでルナの存在を否定するかのような敵意が、闇に揺らめいていた。
にゃん民: な、なんかおかしいぞ
にゃん民: 虚猫シャムってこんな感じだったか?
にゃん民: ヤバい、なんかチャージしてないかあれ…?
シャムは右腕をゆっくりと突き出し、その周囲にドス黒いオーラが揺らめいている。
光の奔流を形成しようとしているかのような仕草に、ルナは即座に決断した。
「ユ、ユニコーンさん、お願いしますにゃ!」
慌ててユニコーンを呼び出し、その背に飛び乗ったルナは、勢いよく身を翻して駆け出す。
ここで正面から戦うのは得策ではないと本能が告げている。
だが、シャムは低く笑いながら自らも召喚を叫ぶ。
「召喚、バイコーン!」
闇色の光が瞬き、漆黒の毛並みと曲がりくねった二対の角を持つ不吉な馬が現れる。
バイコーンは無慈悲な嘶きをあげ、ユニコーンに突進した。
「えっ、待っ……!?」
激突する瞬間、ユニコーンはバイコーンに一撃で弾かれ、その衝撃でルナは背から地面へと投げ出される。
「きゃあっ!」
地面に叩きつけられ、息が詰まる。
ルナは起き上がろうとするが、視界がゆらめく中、シャムが不気味な笑みを浮かべて上空に手を掲げている。
「消えなさい!」
シャムの固有スキル、「哀のかたまり」。
ドス黒い光がボール状に凝縮され、凶悪なオーラを放ち出す。
放たれた黒い球は、轟音と共にルナに直撃した。
「ぐっ……なんで、こんな……!」
ルナは自分の身体が軽く浮き上がるような衝撃を感じ、意識が薄れていく。
戦いの中で手に入れたスキルも、強さも、今は意味をなさない。
気を失ったルナの姿は、猫神ルナではなく、中の人である川島美咲のものへと戻っていく。