ルナは歯を食いしばりながらアナリティクスを発動する。
恐怖をこらえ、視線をクイーンアントへと定めると、ステータス画面が淡く浮かび上がった。
「スキル:眷属生成……!」
クイーンアントの特殊能力に気づいた途端、コメント欄が一気に沸き立つ。
にゃん民: 無限湧きパターン!
にゃん民: 眷属生成を封じれば勝てるんじゃね?
にゃん民: BANで封印すれば!
にゃん民: 月跨いで課金できるようになったから行くぜ!
にゃん民: 今日から新クレカ使えるw
にゃん民: いくぞお前ら、ルナちゃんを救うためだ!
流れるように高額スペチャが投げ込まれ、すぐに100万が積み上がる。
ルナは泣きそうな顔で感謝の言葉を呟く。
「み、みなさん、本当にありがとうございますにゃ……これで眷属生成を封じれば!」
BANスキルを発動し、ルナはクイーンアントに向けて手をかざす。
淡い光が指先から飛び出し、相手のスキルを封じるために一直線に飛んでいく。
しかし、クイーンアントはその一瞬を逃さなかった。
巨体を揺らし、素早くアリモンスターの一匹を投げてくる。
BANの光はクイーンアントに届く前に、飛んできたアリモンスターに当たってしまう。
「えっ、嘘ですにゃ!?」
アリモンスターが盾となり、BANは不発に終わってしまった。
狙いは外され、クイーンアントは健在で、眷属生成も封じられていない。
にゃん民: く、くそ!外した!
にゃん民: もう一回BAN発動するには、また100万必要だろ…
にゃん民: 金がねえよ…これ以上は無理だ
にゃん民: 親に借りる?ヤバいって
「そんな……みにゃさんに無理をさせるわけにはいかないですにゃ……」
ルナは絶望的な思いでコメ欄を見つめる。
アリモンスターたちは再び数を増やし始め、世界樹の根元へ押し寄せる。
エルフたちは後退し、ルナは今にも襲われそうな距離に迫られていた。
にゃん民: 俺たちは所詮、金を投げられなきゃ無力なのか……
にゃん民: ごめんルナちゃん、もうこれ以上は……
にゃん民: 石油王は、石油王はいねえのかよ!
コメ欄は嘆きと無力感で溢れている。
異世界でも金がなければ何もできないのだろうか……