「ぺこん!」
軽やかな通知音が響き、ルナの目の前にオレンジ色のスペリオルチャット(スペチャ)のウィンドウがポップアップした。
画面には、大きく目立つフォントでこう書かれている。
"ルナちゃん、気をつけて!スライムは危ない!溶かされるぞ!"
ルナは一瞬目を見開き、その場で立ち止まる。
「え、これ……スペチャ? ってことは……配信されてる?」
彼女の視線が彷徨い、ようやく自身が配信中であることに気づく。
「み、みんな……ありがとう! 気づけたよ!」
しかし、その直後、彼女の心に緊張が走る。
「やばい、私……ルナとしてのロールプレイが崩れてない? ちゃんとやらなきゃ!」
ルナは慌てて背筋を伸ばし、声を張る。
「おかえりなさいませ、ご主人さま! 猫神ルナ、今日も幸せ届けるにゃ!」
張り切って挨拶をしようとした瞬間、コメント欄が慌ただしく動き始めた。
にゃん民: 今は挨拶してる場合じゃない!
にゃん民: スライムが来てる!
にゃん民: ルナちゃん、後ろだってば!
「う、うん! わかっ.. わかりました、みにゃさん!」
ルナは状況を確認するため、少し後退する。
「引いて、安全な場所に移動しますにゃ!」
視線を巡らせると、近くの木が目に入る。
「よし、木に登ろう!」
急いで木に登ると、足元からスライムがじわじわと迫ってくるのが見える。
「これで少し安全……ですかにゃ?」
ロールプレイを復活させてルナはひと心地つく
にゃん民: よかった!でも次はどうする?
にゃん民: 状況を整理して!
にゃん民: ステータスとか見れないの?
「ステータス? それなら……試してみるにゃ!」
ルナは大きく息を吸い込み、叫ぶ。
「ステータス!」
しかし、何も起こらない。
「……だめだ。何か他に……」
にゃん民: 他にないの?
にゃん民: 普段使ってる配信ツールとか?
にゃん民: VTubeスタジオってやつ?
「それだ! 試してみますにゃ!」
ルナは再び叫ぶ。
「VTubeスタジオ!」
その瞬間、目の前に淡い青色のウィンドウが浮かび上がった。
VTubeスタジオ――普段ルナが使っている配信ツールと同じ名前が現れた画面には、彼女の情報が表示されている。
---------------------
名前: 猫神ルナ
登録者数: 15,000
同接: 103
レベル: 1
Vスキル: 配信(Active)
アナリティクス
攻撃力: 10 (+103)
防御力: 8 (+103)
素早さ: 8 (+103)
スキル: ネコ発勁(はっけい)
----------------------