うきうきなヴィーナス様の隣で冷や汗でシャツがびっしょり濡れていた。
「さぁ、始まりますよ!楽しみですね!」
「……楽しくなんかないですよ、てか、ヴィーナス様は1回観たんでしょ?なら内容わかるじゃないですか?」
「いえ、私はリアルタイムで見てたんで、今回は、総編集版です。私が仕事で見逃したところもあるかもしれないんですごく楽しみです」
「え、神様って仕事あるんですか?」
「もちろんありますよ、今度私の仕事、見学しますか?」
神様の仕事!見学できるの、マジで……人間の俺が?
「いいんですか?」
「いいですよ、ほら星くん始まりますよ!」
俺の生まれた時からの映像が流れ始めた。保育園での失敗や5歳でのおねしょなどの映像は恥ずかしくはあったがまだ耐えれるものだった。
よかった、思ったより全然耐えられる。
俺は少し、安心していた。
「まぁ……小さい頃ってこんなもんですよね」
「あら、あまり、恥ずかしがっていませんね。確かに保育園の頃なんてみんなこのようなものですからね」
ヴィーナス様は俺を見つめ、悲しそうな表情になった。
「それにしても残念ですね、保育園の頃はこんなに可愛かったのに、今は、こんな哀れな姿になってしまって……」
ヴィーナス様の言葉に俺はため息をついた。
全く、何を言ってるんだか、これは見せつけてやらないと……
「今もとってもキュートじゃないですか見てください、この笑顔」
ヴィーナスに向かってきゃぴっと笑顔を向ける。
「……すみません、こっち向かないでください、その笑顔はちょっと……女神の私でも耐えられません」
顔を逸らすほど俺の笑顔ってきついの……?
「いや、そんなにですか!」
「ほら、小学生編が始まりますよ?」
露骨に話変えられた……
小学生時の映像が流れ始める。
小学生かぁ、黒歴史なんかあったかな全然記憶ないし、保育園がたいしたことなかったし、案外なんとかなるかな?
「映像が変わりましたね、これは小学生2年生の時ですね」
「いや、わからないですよ、よくわかりますね」
「リアルタイムでみてたのでバッチリわかりますよ!」
何そのドヤ顔?何そのグッドポーズ!
この女神、俺のこと見過ぎじゃない?
やっぱり……好きなんでしょ?
「うるさいですよ、集中してみてください。」
ヴィーナス様の目が鋭くなった。
目が怖い……冗談ですから、てかうるさいって、喋ってないし!まっ、待ってごめんなさい。睨まないで、その目やめてくださいよ!心読まないでよ……
俺は黙って、映像に集中することにした。
映像が切り替わると、教室で中間休みも昼休みも机でひとりで過ごす自分が映っていた。思い出した、このころ、クラスメイトに声をかけることができなくて……ずっと1人だったんだ。
この頃辛かったな、保育園の頃もあまり友達はできなかったけど先生が遊んでくれたし、けど小学校だと休み時間ができて1人でいる時間増えたんだっけ。
「あー懐かしいですね!星くん、このころ、恥ずかしくてなかなかクラスメイトに話しかけることができなかったんですよね?もじもじしてかわいいですね」
「……人の黒歴史を可愛いって悪魔じゃないですか」
「でもこの後、勇気を出して声をかけることができて友達も作れるようになったからいいじゃないですか。……私この時は感動しましたよ。えらいですよ星くん、よしよししてあげますね。」
ヴィーナス様が隣の席から腕を伸ばして俺の頭を優しく撫でてくる。
予想外の褒められとなでなでに顔は一気に熱くなり自分でもわかるくらい、耳まで真っ赤になった。
「な……なんですか、いきなり」
隣の女神はいつもの意地悪の笑みを浮かべ俺を見つめて来る。
「いえ、星くんが偉かったので褒めてあげようとしたのですが……耳まで真っ赤になってますよ?恥ずかしいんですか?」
……こんな綺麗な人に撫でられたら真っ赤になるに決まってるじゃん、絶対この女神わかっててやってる。俺はヴィーナス様から視線を逸らして映像を見るように促した。
「……恥ずかしいですよ!ほら、次の映像が始まりますよ。そっちみましょう?」
絶対、今のことも心を読まれてバレてるんだろな……この女神、本当にずるい、不意打ちでこんなとするなんて、俺の顔を見ながらヴィーナス様が笑っている様な気がした。
照れくさい気持ちを隠すようにして俺は映像に視線を向けた。