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仄暗い灯が迷子の二人を包むまで
仄暗い灯が迷子の二人を包むまで
霞花怜
現代ファンタジー異能バトル
2025年04月16日
公開日
3.3万字
連載中
※1日1話更新 0:00※【第四回fujossy小説大賞二次選考通過作品】 『俺は最強だよ。だから嫌なんだ』 ネットの求人広告からバイトの面接に行った大学四年生の瀬田直桜は後悔した。これは怪異に関わる仕事だ。そういう類は避けて生きてきたのに。バディを捜しているという化野護にはその場で告白まがいのことを言われる始末。鬼の末裔のくせに邪魅に憑かれている化野が気になって、清祓だけならと引き受けるが、化野の上司の藤埜清人に押し切られ結局バディを組む羽目になる。直桜は体内に神を宿す惟神だ。化野が抱えている「呪い」を解くため、三カ月だけバディを組むことに。ついでに怨霊浄化の仕事をすることになった。化野の中にある魂魄が化野を苦しめている。それなのに化野自身は魂魄を離そうとしない。その現状に直桜は苛々を募らせる。同時に化野という男が気になり始める。そんな時、大学の同級生・枉津楓にも動きがあり……。 ※R18表現を含む話には表題に【R18】を明記しています。 ※リバ・TS・NTR・フリー・レズ・パン・アセクシャル・凌辱・レイプなど物語の展開に合わせて雑多に出てくるBLです。ご注意ください※ 【カクヨム・小説家になろう・ムーンライトノベルズ・アルファポリスに同作品掲載中】

第1話 わかりきった怪異

 岩槻駅からの道を歩きながら、瀬田直桜なおはスマホの地図を開いた。バイトの面接場所が、いまいちよくわからない。

 アプリには真面に表示されないし、近隣を知る大学のゼミ仲間に聞いても、「そんな場所にマンションはない」と言われるばかりだ。

 仕方なく行けるところまで、と来てみた訳だが、案の定、道に迷った。


「やっぱり、やめとくべきだったよな」


 普段の直桜なら、こんな如何にも怪しいバイトには絶対に手を出さない。だが、今回ばかりは何故か、ずるずるとここまで来てしまった。


(条件が良かったってのもあるけど)


 国委託の非常勤勤務だが、三カ月続けは準公務員、半年続けば国家公務員扱いになるらしい。

 今時、国家公務員というのも、正直良い職業とも言えないが、故郷の親類は喜ぶことだろう。集落を説得できれば、大学卒業後も関東に残れる。


(あんな地獄みたいな場所、二度と戻りたくない。説得できる強い材料、何でもいいから探さないと)


 地元に戻らずに済む口実が得られるのなら、仕事の内容など何でもよかった。


(上手くいきそうだったら今の内定蹴って、こっちに鞍替えしてもいいよな)


 今、内定を貰っている企業も悪くはないが、説得のためには些か弱い。国家公務員くらいわかり易ければ、きっと納得してくれるだろう。確証はないのだが。

 正直、何だったら納得してくれるのかもわからない。考えれば考えるほど面倒だ。

 面倒くさすぎて、頭痛がしてくる。

 思い出したら苛立たしくなり、ガリガリと頭を掻きむしった。


「ん? あれ……?」


 全体的に黒い建物が視界に入り込んだ。

 さっきまで、こんな建物は無かったはずだ。

 直桜は小さく息を吐いた。


「やっぱ、の仕事かな。だとしたら、一発採用だろうなぁ」


 躊躇うことなく、直桜は突然現れたマンションに足を踏み入れた。


 自動ドアを潜り、面接に指定された部屋の部屋番号を押そうとパネルの前に立つ。

 押す前に、エントランスの自動ドアが開いた。

 奥に進み、エレベーターに乗ってみる。やはりボタンを押す前に3階のボタンが点滅した。

 エレベーターを降り、303号室の前に立つ。

 インターホンを鳴らす前に、扉が開いた。


「本日、面接予定の瀬田直桜さんですね。怪異には慣れたご様子ですね。時間通りの到着も好ましいです」


 眼鏡にスーツ姿の、如何にも公務員といった格好の若い男が顔を出した。


「マンションを見付けるとこからこの部屋に着くまで全部、テストなのかと思ったので、流れに身を任せました」

「なるほど」


 男が直桜に目を向ける。足元から頭のてっぺんまでを、さらりと観察する。


「貴方は採用です。立ち話も何ですから、中にどうぞ」

「もう採用……。さすがに早い」


 促されるまま、直桜は部屋の中に入った。

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