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第8話 悩んだ時は視点を変えるといい

『敵を倒しました。経験値を獲得します。 

 経験値が一定に達しました。レベルが7アップします。  

 ダンジョンボスとしての仕事を完了しました。  

 報酬としてスキルが得られます。 

 体に損傷を確認しました。損傷した部位の修復に入ります。』  


 ──前回と同じように、頭の中に戦闘終了の通知が響く。  

 同時に、体が発光し、失った右腕が完全に修復された。  


「……ハァ、やっと終わったか。」  


 それにしても、キツい戦いだった。  


 相手の不意をついてこれだ。  

 まともに戦っていたら、俺が勝てる可能は限りなく低かっただろう。  


「いかに自分が弱いか、思い知らされたな……。」


 ──だからこそ、鍛錬を進めるのは当然として、新しい作戦も考える必要がある。  


 今回の戦いで分かったことは、  


「先手を取ることの重要性だ。」  


 正々堂々と戦って勝てない相手でも、戦術次第で有利な戦いに持ち込める。  

 これは今後の戦いにおいて、大きな鍵になるだろう。  


 今のステータスはこれだ。  



 ――――――――――――――――――――


 種族: ゴブリンキングLv13  

 職業: 迷宮守護者ダンジョンボス  


 専用スキル: 小鬼王剣術Lv3  

        眷属支配  


 汎用スキル: 魔力操作Lv6  

        炎初級魔法Lv3  

        雷初級魔法Lv1  

        風初級魔法Lv1  

        土初級魔法Lv1  

        水初級魔法Lv1  

        万能翻訳バベル  


 ――――――――――――――――――――



「……うん、確実に成長はしてるな。」  


 けど、まだまだ足りない。  

 特に手数が圧倒的に欠けている。  


 ──今回、相手の剣使いは【剣技】なるものを使っていた。  


「あれは、脅威的な威力だった……。」


 もし、小鬼王剣術にも剣技が存在するなら、習得すれば戦力が一気に跳ね上がるはず。  


 しかし、今のところ手がかりすらない。  


「なら、地道に小鬼王剣術を磨いていくしかないな。」  


 受験勉強でも、あれこれ手を出す奴は結局どれも中途半端になり、力がつかないものだ。  

 他のものに惹かれる気持ちもあるが、まずは一つを極めるのが大事。  



「よし、それじゃあ報酬のスキルを選ぶとするか!!」  


 ──今、思いついている中で獲得できるスキルは3つ。  


 1. 【身体強化Lv1】  

    - 身体能力を底上げし、戦闘力を向上させる。  

    - 直接的な戦闘力アップには繋がるが、即効性は低い。  


 2. 【魔法攻撃増強Lv1】

    - 魔法の威力を上げる。  

    - だが、魔法の発動速度や精度には影響しないため、今すぐの大幅強化にはならない。  


 3. 【魔力消費緩和Lv1】

    - 魔法の消費MPを軽減する。  

    - 長期戦に向いているが、短期決戦ではそこまでの恩恵はない。  


「……うーん、どれも役には立つけど、決め手に欠けるな。すぐに大幅な戦力アップに繋がるか? 」  



 そう考えると、どれも今ひとつ物足りないし、どれも汎用性がやや低い。  


「……他に、いいスキルはないか?」  


 そう思いながら、頭の中で新たなスキルの候補を模索する──だが手数を増やせて即戦力になるもの……思いつくものがない。


「考え方を変えてみようか?」  


 ──今までは、足りないものを補うスキルを探していた。  

 でも、それでは「普通の強さ」にしかならない。  


 なら、逆に俺の強みをさらに引き出すスキルを探せばいい。  


 俺の強みは何だ?  


「ボス部屋の仕様による、魔法スキルの習熟スピードの速さ。」 


 つまり──  


「魔法そのものが、俺の最大の武器になり得る。」  


 ──とはいえ、魔法には大きな弱点がある。  

 それは「発動に時間がかかること」だ。  


 戦闘中に、簡単に発動できるものではない。

 もちろん、鍛錬すれば克服できるかもしれないが、今の俺にとっては致命的な弱点だ。 


 では、魔法の発動が遅い理由は何か?  


 理由は二つある。  


 ① 魔力を練るのに時間がかかる

  十分な魔力を確保するには、体内で何度

 も魔力を循環させる必要がある。 だが、

 それは相手に「魔法を準備している」と悟

 られ隙を生む。  


 ② 術式の自由度が少ない  

  魔法の威力、範囲、射程、進行方向など

 は、術式で定められている。つまり、相手

 を誘い込まなければ、確実に当てることが

 できない。  


 ──この二つの問題を解決できるスキルはないのか?  


「術式改新、発動時間短縮、弾道誘導……」  


 ありそうなスキルを思い浮かべてみるが、  


 どれも取得可能にならない。  


 この世に存在しないのか?  

 あるいは、今の俺のレベルではまだ習得できないのか? 


「発動までの時間短縮……術式の自由度……発動までの時間短縮……術式の自由度……絶対に当てるにはどうすれば……?」 


 ──はぁぁぁぁ!!!!!!  


 その瞬間、頭に電撃が走った。


 まるで、答えが閃いたかのように。  


 ──これだ!!!  


 これなら、発動の遅さも、術式の制約も、すべて解決できる。 

 むしろ、必殺の一撃に変えられる。  


『【○○○○】は取得可能です。取得しますか?』


 ──もちろん、イエスだ!!!

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