ついにこの日が来てしまった。
もっとも嫌なイベントランキング4位、体力測定。
運動音痴の僕にとって体力測定はほんとにつらい、恥をさらすイベントの一つ。
「はぁ、憂鬱だ。」
「おっはよー!平岡っち!」
「どしたの?」
「いや、まぁ、今日はあれだからさ。」
「あれ?体力測定のこと?」
「うん、そう。嫌なイベントランキング4位。」
「何そのランキング!?1位は?なに??」
「言わないよ!ただでさえ今日が憂鬱だっていうのに。」
「ま、運動音痴でもそれでもいいじゃん!周りなんて気にしなーい!!」
「僕は気にするんだよ。はぁ。」
「大丈夫!あたしが慰めてあげるからさ!」
「なんだそりゃ。」
体力測定が始まり、恒例のハンドボール投げ。
「はい、投げてー。」
力いっぱい投げた。全力で。
「うーん、1mね。はい、次ー。」
うん、わかっていたさ。球技全般ダメなんだから。
この後、50m走やら立ち幅とびやらで午前は終わった。
本番は午後からだ。地獄のあれが待っている。
「よっ!いつものとこ行こー!」
「あぁ、入野さん。うん、ちょっと待って。」
一緒にベンチに行った。
「どうだった?午前!!」
「まぁ思ってた通りだよ。去年と変わらず。」
「ハンドボール投げはー??」
「え!?言わなきゃダメー??」
「気になる。」
「うーん。引かない?」
「引かないよー。」
「1m。」
「うん!知ってた。見てたもん!」
「なぜ言わせた??」
「ふふん、なんとなく!それに。」
「無理と思ってても全力でやったんでしょ?そういう人、あたしは好きだよ。」
「え、1mでも?」
「結果が全てじゃない。全力でやってる人はかっこいい、あたしはそう思うかな!」
「だから、午後もがんばれー!!」
「なんか、ありがと。少しは元気出た。」
「にひひ!それならよし!ご飯いっぱい食べなー!!」
「いや、それ、僕が作ったんだけど。」
「ちっちゃいことは気にしなーい!!」
入野さんはいい人だ。こんな僕を励ましてくれる。
午後もできるだけやってみよ。
そしてついにきた。一番しんどくて厄介なやつ、シャトルラン。
気が重い。だんだんしんどくなるやつ。
じわじわと迫ってくる感じ。
「はーい。始めるからペアになって!」
「あっ、平岡っち!ペア、なろうよ!」
「え、いいの?友達とか?」
「平岡っちも友達でしょ!よろーよ一緒に!」
「うん、わかった。」
最初は入野さんの番。
スタイルいいなぁ。
何か運動やってるのかな。
あっ始まる。
数分後。
めっちゃ運動神経いいじゃん!
次々と脱落していくのに、生き残ってる。
みんな応援してる。全力なんだな。
昼休み言っていたことがふと頭によぎった。
僕も、応援したい!!
「がんばれー!入野さーん!!がんばれー!!」
僕は無我夢中で応援した。
結局最後まで残っていた。
す、すごすぎる。
「入野っち!さっすがー!」
「あんがとー!」
「お疲れ様。最後まで残るなんてすごいね!」
「ふふん!それはねー。」
また耳元で、
「平岡っちが応援してくれたからだよ、ありがと!」
「今度は平岡っちの番だよ!がんばれー!あたしに負けるなー!」
「いや、それは無理だから。」
はぁ、緊張する。やれるとこまでやってみるか。
「始めるぞー!」
音楽がなり始めた。
最初はまぁいい。途中からがしんどいのだ。
数分後。
あぁ、もう無理かも追いついていけない。
次々と音符が迫ってくる。
しんどい。しんどすぎる。もう足が・・・。
ふと、聞こえた。
「平岡っちー!!がんばれー!!」
あぁ、入野さんが僕のことを応援してくれてる。
こんな僕のことを。
期待に応えたい。励ましてくれたこんな僕を。
もう少し。もう少し粘ってみるか!!
そして数分後。
あ、もう足がもつれて無理だ。
もう動けない。ここまでだ。
しんどい。息が荒くなって。
「平岡っち、よく頑張った!」
「さすがじゃん!記録更新だよ!」
「う、うん、、ありがと。」
「久々に、こんなに、走った。」
「入野さん、応援、ありがと。」
「うん!にひひ!」
「入野さんの、おかげで、がんばれた、ほんとに、ありがと。」
「元気出たならそれでよし!どう?ランキングから体力測定はなくなったでしょ?」
「へ??そのために?」
「うん!これからも、もっと楽しも!」
いつも前向きな入野さん。
対して僕はネガティブだった。
けど、今は、少し、
楽しい、かも。