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6 体力測定


ついにこの日が来てしまった。

もっとも嫌なイベントランキング4位、体力測定。

運動音痴の僕にとって体力測定はほんとにつらい、恥をさらすイベントの一つ。


「はぁ、憂鬱だ。」


「おっはよー!平岡っち!」

「どしたの?」


「いや、まぁ、今日はあれだからさ。」


「あれ?体力測定のこと?」


「うん、そう。嫌なイベントランキング4位。」


「何そのランキング!?1位は?なに??」


「言わないよ!ただでさえ今日が憂鬱だっていうのに。」


「ま、運動音痴でもそれでもいいじゃん!周りなんて気にしなーい!!」


「僕は気にするんだよ。はぁ。」


「大丈夫!あたしが慰めてあげるからさ!」


「なんだそりゃ。」



体力測定が始まり、恒例のハンドボール投げ。


「はい、投げてー。」


力いっぱい投げた。全力で。


「うーん、1mね。はい、次ー。」


うん、わかっていたさ。球技全般ダメなんだから。


この後、50m走やら立ち幅とびやらで午前は終わった。

本番は午後からだ。地獄のあれが待っている。



「よっ!いつものとこ行こー!」


「あぁ、入野さん。うん、ちょっと待って。」



一緒にベンチに行った。


「どうだった?午前!!」


「まぁ思ってた通りだよ。去年と変わらず。」


「ハンドボール投げはー??」


「え!?言わなきゃダメー??」


「気になる。」


「うーん。引かない?」


「引かないよー。」


「1m。」


「うん!知ってた。見てたもん!」


「なぜ言わせた??」


「ふふん、なんとなく!それに。」

「無理と思ってても全力でやったんでしょ?そういう人、あたしは好きだよ。」


「え、1mでも?」


「結果が全てじゃない。全力でやってる人はかっこいい、あたしはそう思うかな!」

「だから、午後もがんばれー!!」


「なんか、ありがと。少しは元気出た。」


「にひひ!それならよし!ご飯いっぱい食べなー!!」


「いや、それ、僕が作ったんだけど。」


「ちっちゃいことは気にしなーい!!」


入野さんはいい人だ。こんな僕を励ましてくれる。

午後もできるだけやってみよ。




そしてついにきた。一番しんどくて厄介なやつ、シャトルラン。

気が重い。だんだんしんどくなるやつ。

じわじわと迫ってくる感じ。


「はーい。始めるからペアになって!」


「あっ、平岡っち!ペア、なろうよ!」


「え、いいの?友達とか?」


「平岡っちも友達でしょ!よろーよ一緒に!」


「うん、わかった。」


最初は入野さんの番。

スタイルいいなぁ。

何か運動やってるのかな。

あっ始まる。


数分後。


めっちゃ運動神経いいじゃん!

次々と脱落していくのに、生き残ってる。


みんな応援してる。全力なんだな。

昼休み言っていたことがふと頭によぎった。

僕も、応援したい!!


「がんばれー!入野さーん!!がんばれー!!」


僕は無我夢中で応援した。

結局最後まで残っていた。

す、すごすぎる。


「入野っち!さっすがー!」


「あんがとー!」



「お疲れ様。最後まで残るなんてすごいね!」


「ふふん!それはねー。」

また耳元で、

「平岡っちが応援してくれたからだよ、ありがと!」


「今度は平岡っちの番だよ!がんばれー!あたしに負けるなー!」


「いや、それは無理だから。」



はぁ、緊張する。やれるとこまでやってみるか。


「始めるぞー!」


音楽がなり始めた。

最初はまぁいい。途中からがしんどいのだ。


数分後。


あぁ、もう無理かも追いついていけない。

次々と音符が迫ってくる。

しんどい。しんどすぎる。もう足が・・・。


ふと、聞こえた。


「平岡っちー!!がんばれー!!」


あぁ、入野さんが僕のことを応援してくれてる。

こんな僕のことを。

期待に応えたい。励ましてくれたこんな僕を。

もう少し。もう少し粘ってみるか!!


そして数分後。


あ、もう足がもつれて無理だ。

もう動けない。ここまでだ。


しんどい。息が荒くなって。


「平岡っち、よく頑張った!」

「さすがじゃん!記録更新だよ!」


「う、うん、、ありがと。」

「久々に、こんなに、走った。」

「入野さん、応援、ありがと。」


「うん!にひひ!」


「入野さんの、おかげで、がんばれた、ほんとに、ありがと。」


「元気出たならそれでよし!どう?ランキングから体力測定はなくなったでしょ?」


「へ??そのために?」


「うん!これからも、もっと楽しも!」


いつも前向きな入野さん。

対して僕はネガティブだった。


けど、今は、少し、


楽しい、かも。


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