今日も僕の隣には、黒ギャルがいる。
今日は遅刻しなかったようだ。よかった。
それにしても、
昨日から心臓の鼓動が治っていない。
いや、むしろ悪化している。心臓が飛び出しそうだ。
あまり彼女を意識しないようにしないと。
休み時間はいつも読書をしている。
窓からの春風が心地よい。
だが今年はなんか違う!?
僕の目線は自然と目の前の文章から黒ギャルへ。
いつの間にか目で追ってしまう。
こんなのバレたら絶対気持ち悪がられる。
あまり見ないようにしよう。見ないようにしたいが、目で追ってしまう。
一体どうしたんだ僕は。
ふと黒ギャルの手に目がいった。
きれいな手だ。ギャルといえばネイルとかメイクとか。
ネイルはしてない。苦手なのかな。
「それじゃーここはぁーっと、平岡〜。平岡ー!平岡ーー!!」
「は、はい!!」
「平岡がぼーっとしてるなんて珍しいな。ここの問題解いてみろー。」
「え、えぇーっと、、、」
どこだ。どこの問題だ??
隣の席からひっそり声で、
「2の3の問題!」
「2の3の問題!?」
「あ、えぇーっと、、、a=1/2です。」
「お、おう正解。ちゃんと聞いとけよー。」
「は、はい、すみません。」
助けてくれた?っていうよりも話しかけられた!?お、お礼言わなきゃ。
「あ、あの。」
「ん?どしたの?」
「さっきは、あ、ありがとう。」
「あー、いいよいいよ、お互い様だし!」
なんだ。なんなんだ、この心臓が絞められる感覚は!?
この後も授業に集中できない僕であった。
ーキーンコーンカーンコーン
昼休み。今日はどこで食べよう。人気のないところがいいな。
中庭の桜が咲いているところは、と。
女子がいっぱいだな。
花壇のところのベンチはどうかな。
よし!誰もいない。今日はここで食べよう。
久々にここのベンチ来たな。
桜じゃないけど花は花だ。これも花見だ。うん。
「桜のとこ、めっちゃ人多いじゃ~ん!さすがにこっちのベンチは人いないっしょ!」
やばい誰か来る!?と思ったがもう遅かった。
「ありゃー、先客がいたかー。ってか隣の席の!?えーっと、平岡、そう平岡君だぁ!」
「あ、うん、どうも。」
なんで僕はこんなにも愛想がないんだ!?
「一緒食べていいかなー?おねがーい!!」
「う、うん、いいよ。」
「やったぁー!!隣座るねー!」
「ってか弁当!?おいしそー!!お母さん作ってくれたの??」
「い、いや、僕が作ったけど、、、」
「え!?まじ!?すげーじゃん!!料理できるんだね!!」
「うん、まぁそれなりに、かな。」
「なーんか1個ちょーだいよー!卵焼きとか!!」
「うん、いいよ。どうぞ。」
「え、まじ!?くれるの??やったー!! 1個もーらい!!」
「代わりにあたしの焼きそばパン、一口あげるー!」
なんなんだこの状況はぁーーーー!?
一口って食べかけじゃん!?
ん?食べかけの焼きそばパンをそのまま一口??
これは小説で読んだ間接キスというのでは??
どうする、待たせちゃいけない、早く食べなきゃ。
間接キスなんて思わなくていい、大丈夫、落ち着け、僕。
「それじゃ、一口だけ。」
「どう?ここの購買の焼きそばパン、うまいっしょ!」
「うん、おいしい。」
「でしょー!にひひ~!」
心臓がもたん。この黒ギャル、僕を殺す気なのか!?
この後、学校が終わるまで、あの焼きそばパンのことで何も考えられなくなっていた。