物心付いた時から両親は家にいなかった。
両親は夜遅くにしか帰ってこず、ハウスキーパーの人が世話をしてくれていた。
小学校に入ると、だんだんとハウスキーパーは来なくなり、自分でご飯を作るようになっていた。
最初はゴミのようなご飯だったがだんだん上達していった。
学校は、無口だからか、友達と呼べる人は一人もいなかった。
両親の転勤が2年ごとに訪れ、転校しては馴染めず、知らない土地を転々とするばかり。
友達などできるわけもなく中学校にあがった。
初めての知らない土地で中学校に入学、知らない顔ばかり。
よかったのか悪かったのかはわからないが、中学の間は転勤はなかった。
母親が久々に話しかけてきた。
「
「わかりました。母さん。」
久々の会話はこれだけ。僕に興味がないのだろう。
言われた通り、学校が終わった後、近くの塾に入れられ、中学3年間を勉強に費やした。
高校は受験をし、進学校へ入学することになった。
しかし、家からは遠すぎたため、久々に父親に話しかけた。
「父さん、高校が少し遠いから一人暮らしをさせてほしいんだけど・・・。」
僕は恐る恐る聞いた。父親とも小学校以来、会話をしていない。
「おう。いいぞ。部屋は適当に決めておくからそこに入りなさい。」
「ありがとうございます。」
あっさり決まった。部屋の選択肢など今の僕にはなかったし、口答えもできなかった。
ー冷めきった家族。
ようやくこの家から出ていけることになった。