数時間後、俺はルディを呼び出した。
「そろそろルディ、剣術を特訓しようか!」
「は、はい・・・。」
「どうした?」
「あまり、その、自信がなくて・・・。」
「さっきのテストはよかったけど・・・どうして?」
「ほんとは魔法を使いたかったのに、剣術ばかり上手くなってしまって・・・それで親からも周りからも魔人族なのにどうしてって・・・。魔法の才能がないのかなって。」
「んー。それは違うな。確かに得意不得意は誰にだってあるけど君はそうじゃないと思うよ、ね?ルーナ!」
「はい!さっき教えてた感じだと普通に使えてましたよ!」
「え!?ほんとですか??」
「たぶん君は実践で学ぶタイプだと思うよ。今まで教本や授業で学んだ魔法も身になっていると思うけど、実際に試してみて、んー、実際にモンスターと戦ってみてかな、分かると思うよ!」
「そうなんですか、ね・・・。」
「とりあえず俺と戦ってみようか、全力でいいから。魔法・剣術、両方使っていいからさ!」
「わ、わかりました・・・。」
「結界魔法 空間8/8。」
まずは魔法か、ファイヤーストーム。うん、さっきよりも威力が上がっている、というよりも魔力の使い方が上手くなっているという感じか。剣術はと、うん、やはり・・・。
「剣術がまっすぐすぎる。もっと柔軟に動いて、次俺がどう動くか考えるんだ。」
「わかりました!」
「それじゃ、俺も剣で攻撃するからね!いくよ!」
うん、俺が一方的に攻撃して受け身もできている。俺が間合いをとっている隙に魔法も打ち込んでくる。
やはり実践で上達するタイプのようだ。
「よし!ここからは応用だ。剣で打ち込む瞬間に魔法を使えるかな。」
「や、やってみます!」
右手には剣、左手には魔法、上手くいっている。2つのことが同時にできる器用なものだ。
「よし!ここまで!今の感じを忘れないように。常に実践でどう自分が立ちまわるか考えること。それから、さっきの剣と魔法の同時攻撃の習得。これが次までの課題かな。」
「わかりました!ありがとうございます!」
「この調子でがんばってね!」
よし、あとはあいつだな。
「マダラス!そろそろ素振りはいいだろう。」
「わかりました・・・。」
「君にもさっきのルディのように、剣と魔法の同時攻撃をマスターしてもらう。自分を守る幅が増えるからな。テストでも魔法は得意そうだったけど、剣術が気になったから素振りをしてもらった。なぜかわかるか?」
「わかりません・・・。さっき先生は基礎がないって言ってましたよね?俺の剣はそんなに未熟なんでしょうか?」
「そうだな・・・剣って狩りをすることも人を守ることもできる。時には人を殺すことだってできる、それを一番実感出来るものなんだよ。君にはその意味を理解してもらいたい。その剣先を誰に向けるかをね。」
「人を・・殺す・・・その意味・・・。」
「この先何があるか分からない。家族や自分を守るために使うのか、守るために他人を殺すのか、その覚悟が君にはないのさ。わかるかい?」
「覚悟・・・それは考えたこともありませんでした・・・。」
「自分自身を客観的に見てどう見えているか、どうすれば負けないか、それは果てしない努力の積み重ねかもしれない。でもね、結果は残酷なものが多い。ましてやこの今の種族間の情勢だ。いつ戦争が起こってもおかしくないだろう。もっと考えろ。そして実践しろ。それが君の糧となる。」
「わ、わかりました!!俺なりに考えてみます!!」
「うんうん!よろしい!」
「あ、でも剣術の基礎はなってないからまずは素振りからね。また素振りしといて~。」
「・・・は、はい!わかりました・・・。」
それからルーナのところの獣人のセリンダのことに行ってみよう。弓の練習をしているようだし。
「ルーナ!弓はどうだい?」
「セリンダちゃんなかなか上手いですよ!」
「あ、先生!弓はあたし得意ですよ!!」
「何かしてたのかい?」
「狩りとか狩りとか狩りとか・・・です!!」
「狩りだけかい!!まぁでもさっきの感じを見ると手慣れてることはわかったよ。」
「だけど、次の矢の装填と狙いの定めが少し甘いね。と思ったけどルーナはどうかな?」
「同じくそう思いました。あとは魔法の素質もあるみたいなのでフローズンアローとかの魔法と組み合わせて使えそうですね!」
「そ、そうなんですか!?そんな能力が、あたしに・・・。」
「おぉ、それはなかなかだね!ルーナ、引き続き頼むよ!」
「わかりましたー!」
夕方になってきたな。そろそろ終わらせるか。
「みんな!そろそろ授業終了するよー!各自終わってねー!あ、あとマダラスはあとで来なさーい!」
「マダラス、それじゃ君の家に案内してくれるかな。」
「わかりました。」
ー貧困街。
俺たちは貧困街にあるマダラスの家に寄った。
「先生、ここが俺の家です。」
「ただいま、母さん、今帰ったよ。」
「あ、お帰りマダラス、この方たちは・・・?」
「新しく担任になった先生だよ。弟を見てくれるって。」
「あらまぁ、先生、こんなところまですみません。私はこの子の母でベアトリスと申します。息子が失礼なことしませんでしたでしょうか?」
「大丈夫ですよ、ベアトリスさん。少し元気がありすぎるくらいです!」
「それより、弟さんを見せてもらっても?」
「はい・・・こちらです・・・弟のフォルです。3年くらい前でしょうか。フォルが倒れて医者にも見せたのですが原因が分からずこのままで・・・。」
「フォル君こんばんは。お兄さんの先生です。よろしくね。」
「先生?こんばんは・・・。」
「ちょっと体見たいから触ってもいいかい?」
「うん・・・。」
体の隅々まで見た。傷一つない。なんだろう・・・これはあれを試してみよう。
◈スキル『即解』
なるほど、そういうことか。となれば・・・。
◈呪術『解呪』
禁忌録に呪いのことも書かれてあるとは思わなかったが、こんなところで役立つとは。
「フォル君。調子はどう?」
「あれ、胸の痛みがなくなった!!」
「じゃぁ大丈夫そうだね。ベアトリスさん、もう大丈夫ですよ。治りました!」
「え!?本当ですか!?こんな短時間で!?フォル、もう大丈夫かい??」
「うん!ほら、こんなにジャンプしても全然大丈夫!!」
「こ、こんな嘘みたいだわ・・・先生、ありがとうございます・・・でも何が原因だったのでしょう?」
「ちょっと重めの病気だったようです!魔法で治癒しましたのでもう大丈夫です!」
「そうでしたか!!なんとお礼を言ったらよいか・・・ほんとにありがとうございます!!このお代は・・・。」
「そんなのいりませんよ!あ、マダラス君の出世払いで大丈夫です!」
「あ、ありがとう、ございます・・・。」
「先生、ほんとにありがとうございました!!フォルがこんなに元気になるなんて・・・ほんとに、ほんとに感謝します!!この恩はいずれ絶対にお返しいたします!!」
「うんうん、まずは授業をがんばってね!それじゃ、俺たちはこれでお邪魔するよ。」
家族水入らずのところ邪魔してはいけないし、ささっとマダラスの家をあとにした。
「灯生殿、あれは嘘ですね?」
「え?嘘って何がです?」
「重めな病気と言ったことですよ、ルーナ嬢。」
「え、それじゃなんだったんですか、あれは!?」
「アルファス、君ってやつは。はぁしょうがないな。あれは病気じゃないよ。外傷も熱も咳もしていなかったからね。呪いだよ、あれは。」
「え!?呪い、ですか・・・。」
「でも、どうして呪いって言わなかったんですか?」
「びっくりさせるだろ、呪いって言ったら。アルファス、呪術っていうのは使える者は多いのかい?」
「人間はまして、魔人族でも早々いないでしょう。呪術というのはかける側とかけられる側、双方に代償を伴いますからな。」
「まぁそれは初耳だったけど、まぁそんな感じがしたから言わなかったんだよ。言ったら怖がらせてしまうからね。」
「なるほど・・・呪いですか。そんなのいったい誰が・・・。」
「まぁそんなの考えたって仕方ないでしょ。弟のフォル君は助かったんだし。呪術をかける側にも代償があるんだったらそいつもタダでは済んでないだろうからね。」
「そ、それもそうですね・・・。」
「さぁさ、帰ろうか。今日は長い1日だったよ。疲れた~、よく眠れそう。」
俺たちはテレポートですぐにミンチェスター邸に帰宅した。