早朝、俺たちはギルドへと向かった。
「お待ちしておりました。それでは馬車へ。」
「コルビアさんも一緒に行かれるのですか??」
「えぇ、案内せよと仰せつかっておりますので。」
「それでしたら俺たちの荷車で移動しましょう。そちらの方が速いと思いますから!」
「そ、それはどういう?」
カメ吉が元のサイズに戻り、アイテムボックスから荷車を取り出した。
「カメ吉、調子はどうだい?」
「絶好調ですぜぇ、親分!!」
「よし!コルビアさん、どうぞお乗りください!」
「これはまた、変わった形の荷車ですね・・・。」
かなり驚いているようだ。
それもそうだ。突然、ガルゲゾが現れ、突然荷車が出現したのだから。
荷車は俺が調整して、半球に改造したから、あまり見慣れないだろう。
「こ、これは、なんと!?」
「まぁ驚くのはまだ中を見てからですよ。」
「これはまた、荷車の中に家、ですね・・・。」
「まぁくつろいでください!」
「昨日、ケイプさんからいただいた紅茶がありますから。」
「それじゃぁ、失礼して・・・。」
「出発しまーす!!」
マトシリカを出発して数時間。
「コルビアさん、乗り心地はいかがですか?」
「いや、最高です!!」
「ソファがあるのもすごいですが、揺れがないのがとても居心地がいいです。」
「灯生様!?これは売れますよ!!ぜひトローム商会に売ることをおすすめします!!」
「それは何よりです!」
「今は売ることは考えていないんですよ!これは元の荷車を改良して作ったもの。」
「いずれ俺が一から作りたいと思ってるんですよね!」
「少し時間がかかるので、今は旅を優先させたいと思います。」
「ん~、そうなのですか・・・。」
「そういえば、灯生様はなぜ旅をしてらっしゃるのですか?」
「あ、それは私も聞きたかったことです。」
「リアもにゃ!」「私もです!」「僕も!」
なぜ旅をしているのか、か・・・。
最初ルーナと出会った時、とっさについた嘘。
本当は転生してきた、とは言えない。
転生してきた意味。それは、前世では叶わなかった幸せを掴むこと。
それが一番だ。今ではこんなにたくさんの仲間に巡り合えた。
唯一、仲間にしてないのは・・・人間だ。
ここに集まったみんなは、境遇は違えど、何かに虐げられても希望を捨てなかった者たち。
これが運命なのかはわからない。
幸せにみんなと暮らす。
それを阻むものは誰であろうと容赦はしない。
それには知識と力がいる。
「灯生様?」
「なぜ旅をしているか、ですか。」
「理由はいろいろありますが、強いて言うなら、平和に暮らすため、ですかね!」
「平和に暮らす、ですか・・・。」
「はい!それにはもっとこの世界を知らなければいけません。知識も、力も。」
「なるほど。わかりました。」
「今までギルドの受付としてやってきましたが、あなたのような人は見たことがない。」
「肩書持ちの方でも力にうぬぼれているものばかりでしたから。」
「その肩書持ちというのはなんなんですか?」
「一言で言えば王国の守護者です。現在存在している肩書持ちは6人おります。」
「肩書持ちはSランク以上になれるのはご存知かと思いますが、本当は、ハンターギルド統括長の推薦、商会ギルド王宮直轄長の推薦、5大貴族の推薦、そして現在の国王である37代国王 ゴルザスタイン・ランドベルク王の推薦があってのち、肩書持ちとなるのです。」
「なんかかなりめんどくさいですね。」
「そうなんですが、そういう王国の決まりなんですよ。」
「またいずれ6人の肩書持ち達ともお会いすることになるでしょう。」
「絶対に敵に回さぬようにお願いします。」
「わ、わかりました、気を付けます・・・。」
「そういえば商会ギルドの会頭ってケイプさんじゃないんですか?商会ギルド王宮直轄長っていうのは?」
「あぁ、それは王宮直属の商会でトローム商会とは違うんですよ。」
「トローム商会もかなり大きな商会ですが、それ以上に貴族が牛耳っている商会になります。」
「なるほど。なんとなくわかりました・・・。」
「あと、敵に回さないものがもう一つございました。」
「時が来ればいずれお話いたします。」
なんだ、もう一つの敵に回したくない存在とは。
それにしても、王都は思っていた通りかもしれない。
貴族というのはどこの世界でも同じということなのか。
それに6人の肩書持ち。会わないようにしたい。できれば。