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9 サリヴァンへ向けて


早朝、俺たちはギルドへと向かった。


「お待ちしておりました。それでは馬車へ。」


「コルビアさんも一緒に行かれるのですか??」


「えぇ、案内せよと仰せつかっておりますので。」


「それでしたら俺たちの荷車で移動しましょう。そちらの方が速いと思いますから!」


「そ、それはどういう?」


カメ吉が元のサイズに戻り、アイテムボックスから荷車を取り出した。


「カメ吉、調子はどうだい?」


「絶好調ですぜぇ、親分!!」


「よし!コルビアさん、どうぞお乗りください!」


「これはまた、変わった形の荷車ですね・・・。」


かなり驚いているようだ。

それもそうだ。突然、ガルゲゾが現れ、突然荷車が出現したのだから。

荷車は俺が調整して、半球に改造したから、あまり見慣れないだろう。


「こ、これは、なんと!?」


「まぁ驚くのはまだ中を見てからですよ。」


「これはまた、荷車の中に家、ですね・・・。」


「まぁくつろいでください!」

「昨日、ケイプさんからいただいた紅茶がありますから。」


「それじゃぁ、失礼して・・・。」


「出発しまーす!!」



マトシリカを出発して数時間。


「コルビアさん、乗り心地はいかがですか?」


「いや、最高です!!」

「ソファがあるのもすごいですが、揺れがないのがとても居心地がいいです。」

「灯生様!?これは売れますよ!!ぜひトローム商会に売ることをおすすめします!!」


「それは何よりです!」

「今は売ることは考えていないんですよ!これは元の荷車を改良して作ったもの。」

「いずれ俺が一から作りたいと思ってるんですよね!」

「少し時間がかかるので、今は旅を優先させたいと思います。」


「ん~、そうなのですか・・・。」

「そういえば、灯生様はなぜ旅をしてらっしゃるのですか?」


「あ、それは私も聞きたかったことです。」


「リアもにゃ!」「私もです!」「僕も!」


なぜ旅をしているのか、か・・・。

最初ルーナと出会った時、とっさについた嘘。


本当は転生してきた、とは言えない。

転生してきた意味。それは、前世では叶わなかった幸せを掴むこと。

それが一番だ。今ではこんなにたくさんの仲間に巡り合えた。


唯一、仲間にしてないのは・・・人間だ。


ここに集まったみんなは、境遇は違えど、何かに虐げられても希望を捨てなかった者たち。

これが運命なのかはわからない。

幸せにみんなと暮らす。

それを阻むものは誰であろうと容赦はしない。

それには知識と力がいる。


「灯生様?」


「なぜ旅をしているか、ですか。」

「理由はいろいろありますが、強いて言うなら、平和に暮らすため、ですかね!」


「平和に暮らす、ですか・・・。」


「はい!それにはもっとこの世界を知らなければいけません。知識も、力も。」


「なるほど。わかりました。」

「今までギルドの受付としてやってきましたが、あなたのような人は見たことがない。」

「肩書持ちの方でも力にうぬぼれているものばかりでしたから。」


「その肩書持ちというのはなんなんですか?」


「一言で言えば王国の守護者です。現在存在している肩書持ちは6人おります。」

「肩書持ちはSランク以上になれるのはご存知かと思いますが、本当は、ハンターギルド統括長の推薦、商会ギルド王宮直轄長の推薦、5大貴族の推薦、そして現在の国王である37代国王 ゴルザスタイン・ランドベルク王の推薦があってのち、肩書持ちとなるのです。」


「なんかかなりめんどくさいですね。」


「そうなんですが、そういう王国の決まりなんですよ。」

「またいずれ6人の肩書持ち達ともお会いすることになるでしょう。」

「絶対に敵に回さぬようにお願いします。」


「わ、わかりました、気を付けます・・・。」

「そういえば商会ギルドの会頭ってケイプさんじゃないんですか?商会ギルド王宮直轄長っていうのは?」


「あぁ、それは王宮直属の商会でトローム商会とは違うんですよ。」

「トローム商会もかなり大きな商会ですが、それ以上に貴族が牛耳っている商会になります。」


「なるほど。なんとなくわかりました・・・。」


「あと、敵に回さないものがもう一つございました。」

「時が来ればいずれお話いたします。」


なんだ、もう一つの敵に回したくない存在とは。

それにしても、王都は思っていた通りかもしれない。

貴族というのはどこの世界でも同じということなのか。

それに6人の肩書持ち。会わないようにしたい。できれば。


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