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第3話:いざ出陣(3)

 マスコミたちが用意した100インチモニターにはいろいろなコメントが表示されていた。義昭は「うぎい!」と呻くしかない。


"みんなでJC義昭総理の名前決めようぜ!"

"よし子ちゃんに一票!"

"そのまますぎるだろ。あっきーな"

"昭和かよ。ヨシュアだろ"

"それ、紀元前。でも好きwww"


 論争が行われた結果、義昭のJC姿はヨッシーということに決まった。任天堂に怒られそうな気はしたが、相手は総理だ。総理なら任天堂法務部にも勝てるということで丸く収まった。


「ヨッシー。これからよろしくね☆彡」

「信長殿……よろしくね☆彡じゃないでおじゃる! でも、よし子よりかは100倍マシじゃな……」

「では、それがしは明智光秀改め、ミッチーで」

「おぬし、なんかノリノリじゃな!?」

「んじゃ、先生はノッブでー! 秀吉くんは……サルですね?」

「うきーーー!?」


 なにはともあれ、アバター姿に変わったのだから、せっかくなので名前も現代ダンジョンに合わせたものに変えた。


 足利義昭改め、ヨッシー。

 織田信長改め、ノッブ。

 明智光秀改め、ミッチー。


 そして……手乗りサルはそのまま【サル】で落ち着く。


「じゃあ、これからダンジョンを攻略していくことになるわ。でも、改めて聞くけど、ここは難易度SSクラスのダンジョンよ。内閣支持率ってそんなに大切なの?」

「大切でおじゃる! 内閣支持率は魂の価値でおじゃる!」

「いやでも……そんなもの無くても、別に良くない?」

「聞いてほしいのじゃ! わっちはそこのノッブに足利幕府の支持率を落とされて、失脚したのじゃ!」


 織田信長。現代日本の時代でも足利義昭を支え、彼を総理大臣の座に就けてくれた大恩人だ。だが、信長は戦国時代の頃から変わっていなかった。


 信長は世論を味方につけるのが上手い。戦国時代なのにも関わらず、世論を操作して、それを背景に足利義昭を失脚させた。


 現代日本はそんな信長にとって、水を得た魚のようなものだ。信長と世論を敵に回して、総理の座に居座り続けることなど不可能だ。


 それゆえ、義昭は総理大臣になった後、今度こそ、信長に政権を奪われないようにした。信長と敵対しないようにしつつ、自分の力で現代日本が抱える問題を解決しようと日夜奮闘したのだ。


 だが、信長率いる織田自由党を政権から排除したままの政権運営は、現代でも失策続きとなる。


 古今東西の教養に優れ、合戦もこなせる有能すぎる細川幽斎こと細川藤孝をスポーツ教養庁長官に据えた。


 その細川の異母兄にあたる三淵藤英を外務大臣に据えた。この男は戦国時代に信長との折衝役を務めた。


 戦国時代にHow to SEX本を出版した松永久秀、通称:ボンバーマンを少子化対策庁長官に据えた。


 足利政権は万全とも言えた。しかし、この3人がやらかした……。


 細川藤孝は「スポ根復古の何が悪いんだ!」と時代錯誤な暴言を放った……。


 三淵藤英外務大臣は「トラスト・ミー」とA国とC国の代表に言い放った……。


 松永久秀は……同人会場で「ふたなりは悪い文化!」と言い放ち、爆破エクスプロージョンした。


 トドメに義昭は昨今の物価高に対抗するため&支持率回復のために国民全員へ米俵を配った……。


(現ナマのほうが良かったかのう……)

(そりゃ現ナマのほうが良いに決まってますよ)

(信長殿! こいつ、直接脳内に!?)

(ふふ……エルフのスキルみたいですよ? 便利ですね?)

(何をなじんでおるんじゃー!)


 国民の支持を考えれば、このままJC姿のままのほうが良いのであろう。自分の元の姿は国民の憎悪が集中している。


 しかしながら、このままJCの姿のままではいけない。いろいろと……まずい。特に手乗りサルに変貌した秀吉がねっとりと気持ち悪いくらいにこちらを見つめている。


 しかも「げへ、げへへ……」とヨダレを垂れ流していやがる。


(こいつ。無類の女好きであったな)

(ええ。同僚にカレシを作れと言われたのに断固拒否したくらいですからね)

(ちなみに信長殿。現代でもカレシを作っておるのかえ?)

(おっと!? 法に触れるのでその話はやめてくださいね!?)

(あっこれ、男子中学生になってたら、もっとやばかった?)

(うっへんおっほん!)


 義昭はお尻の貞操の危機を偶然回避できたようだ。気を取り直して、元の姿に戻るために女神と向き合う。


「ん? 何か物欲しそうな顔をしてるわね?」

「……難易度SSクラスのダンジョンを攻略するのに、このパーティだと不安でおじゃる」

「んもう。しょうがないにゃあ?」

「ちょっとは悪いと思わないでおじゃるのか!?」

「うそうそ。わたくしもすこーーーしだけ悪いと思ってるわよ」


 女神はこうなったのもゲームマスターの自分の落ち度であると認め、ダンジョン攻略を手伝ってくれることになった。


 女神がパーティに加入することが決まり、内閣支持率がほんのりと回復した。


"年増か"

"ババア"

"JCヨッシーちゃんのほうが破壊力は上"

"やっぱ、JCよな"


「ちょっと失礼ね! ナイスバディのわたくしが加入したのに、なんでJCの皮を被ったヨッシーのほうが人気なの!?」


 女神には悪いが、勝ち誇った気分になってしまう。あちらは文句のつけようのないナイスバディなお姉ちゃんだ。


 しかし、こちらはそれらをぶっ飛ばせる生命パワー溢れるJCだ。勝負にすらならないと言ってよい。


「ひそひそ。年増はお呼びではないということじゃ」

「う、うるさい! 324歳のどこが悪いわけ!? 300引いたら、24歳のお姉さんよ!? OL2年目の結婚したい女子No1の歳よ!?」


"【審議中】 ( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )"


「クッコロ!」


 女神が地団駄を踏んでいる。そんな滑稽すぎる女神を信長は見ている。彼は悪い笑みを浮かべながら「くく……」と声を漏らしている。


「さて、色々ありましたが、ダンジョンに挑むメンバーが決まりましたね」

「信長殿、何をまとめに入っているでおじゃる?」

「こういうのはサクサク進めたほうがいいんですよ。尻は熱いうちに打てってやつです」

「そこは尻じゃなくて、鉄……なのじゃ」


 義昭ことヨッシーは「やれやれ……」と肩をすくめる。


 なにはともあれ、ダンジョンに挑むメンバーが決定した。


 黒髪ツインテ姫武者それなんてエロゲJC(足利義昭)。

 グラサンちょんまげにアロハシャツ&ビーチサンダル男エルフ(織田信長)。

 マッチョな褐色ドワーフの肉壁戦士(明智光秀)。

 手乗りサル(サル)。

 ナイスバディの324歳の駄女神。


「しっかし、ダンジョン配信としては絵にはなると思うのじゃが……このメンツでダンジョン攻略が進むのかのう」

「無理じゃないですかね?」

「信長殿。ハッキリ言い過ぎじゃろ!」

「あははっ。まあでも、絵になることは間違いないでしょ」

「それもそうじゃな……」


 ヨッシーたちはダンジョン配信しながら内閣支持率を回復させつつ、元の姿を取り戻すためにダンジョン攻略に乗り出すのであった。


 そこに多大な苦難の道が待ち構えていることも知らずに。


「では、未踏のダンジョンに先生が一番乗りです!」

「ちょっと待つのじゃ! パーティリーダーのわっちじゃろ!? そこは譲ってくりゃれ!」

「いーやーでーす! はい、第一歩ぉぉぉ!」

「くぉぉぉ! 駄女神様、こやつを罰してほしいのじゃぁ!」

「誰が駄女神よっ! えいえいっ!」

「うぎゃあ! いきなり空から雷が落ちてきたのじゃーーー!」



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