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【伊藤博文】大丈夫、奥の手がある

 伊藤博文は考えていた。南アメリカを攻略した後のことを。今や世界は大日本帝国とフランスの領土が大半だ。そうなると、いつかはフランスとも戦争になる。その「いつか」はいつになるかは分からない。



 フランスがイギリスと戦争をしている時に、自動式機関銃やダイナマイトなどをフランスに提供している。いくら、中国を我が物にするためとはいえ、やりすぎたかもしれない。いくら、新兵器の飛行機があるとはいえ。



 大日本帝国の領土は北中米にインド、インドネシア、オーストラリアに中国。島国が多い。対してフランスはアフリカ大陸を手に入れている。島国と大陸。どちらが便利かは分からない。



 まあ、問題なかろう。新兵器は飛行機だけではない。奥の手がある。できれば使いたくないが。



 フランスを倒した後は簡単だ。残りはヨーロッパ諸国とロシア帝国のみ。先にヨーロッパに進出すれば、ロシア帝国を挟撃できる。よし、それで行こう。



「首相! この新聞を見てください!」



 側近が急ぎ足で執務室に入ってくる。その手に握られた新聞には一面にこう書かれていた。「大日本帝国を潰せ! 全世界で団結せよ!」と。





 これは予想外だった。これでは南アメリカへの攻撃どころではない。全世界が団結したならば、守備を固めなくてはならない。大日本帝国本土を守れるかさえ怪しい。その時、フランス側から人質をもらっていたことを思い出した。貴族の娘を。現在の状況では、意味をなさないが。そもそも、通商条約を結ぶ時の条件が甘すぎたのだ。人質一人など。待てよ。有効的な使い方があるではないか!



「今から書く手紙を貴族の娘に渡して、フランスへ帰国させろ」



「首相、まさか降伏するおつもりですか?」



「いや、違う。その逆さ」



 側近は意味が理解できてないらしく、口をぽかーんと開けていた。



「まもなく、全世界は我が国のものになる。それも意外な方法でな」

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