勝海舟にフランス領アフリカへ物資の補給を命じた伊藤博文は、今度は西郷隆盛を呼び出した。
「それで、用件とは何でしょうか?」と西郷。
「次に攻める場所が決まった。それは
「中国ですか。しかし、なぜこのタイミングで? ……そうか、フランスとイギリスが戦争中だからですか」
伊藤博文は頷く。
中国は事実上、イギリスの支配下にある。なぜか。十数年前にイギリスが中国にアヘン(麻薬の一種)を密かに輸出したのが始まりだった。中国政府がアヘンの禁輸をすると、イギリスはそれに抗議した。戦争という形で。そして、イギリスが勝った。それ以来、中国は事実上イギリスのものになっていた。
「なるほど。フランスとイギリスが戦争をしている現在、中国の守りは薄いということですか」
「そうだ。そして、イギリスが劣勢になればなるほど、中国の守りはより薄くなる。フランスへ武器を補給するのを勝海舟に命じたのは、それが理由だ」
そう、アフリカをフランスにやる代わりに中国は大日本帝国がもらう。そうすれば、アジアはすべて大日本帝国のものとなる。そして、中国を足がかりに、ユーラシア大陸の各国への進出が可能になる。アフリカ半分をもらうより、この方が効率的だ。
「では、中国へ行く準備をしてきますので、失礼します」
今回の作戦は大日本帝国に近い朝鮮半島を攻めることから始まるだろう。その場合、半島に近い九州が攻撃されることも考えられる。しかし、「攻撃は最大の防御」とも言う。攻撃を開始すれば気にしなくて済むだろう。伊藤博文は大きく伸びをするとイスに深々と座り込んだ。
伊藤博文は思った。当分は経済を回すとことよりも、領土拡大するを優先しようと。
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西郷隆盛は中国との戦争があっけなく終わったことで、面白みを感じなかった。戦争でこんな気持ちになるのは久しぶりだった。あとは伊藤博文に連絡すればいい。どこかで大きな戦争が起きないだろうか。大日本帝国が大きくなればなるほど、戦場は減っていく。自国のために戦っているために、西郷隆盛は好きな「戦争」ができるチャンスは減っていく。なんとも皮肉なものだ、と西郷隆盛は思った。