インドの攻略成功! 伊藤博文は勝海舟らの報告を受けてウキウキだった。勝海舟たちも今度は連携が取れたようで、伊藤博文は満足していた。これからもそうあって欲しいが、どうなるやら。
インドが領土になったということは、裏を返せば大日本帝国が守るべき場所が増えたことを意味する。西はインド、東はアメリカまですべてを守らねばならない。これは難題だった。世界征服を目指すのなら、避けて通れない道だった。
今まで、勝海舟や西郷隆盛に負担をかけすぎた。世界各地を転戦しては、すべて勝ってきたのだ。2人の活躍に伊藤博文は頭が上がらなかった。その活躍に報いるためにも、頑張らねばならない。伊藤博文はそう思った。
しかし、具体的にどう頑張ればいいのか、答えを出せないでいた。経済を回して大日本帝国の経済を潤すこと? それとも、2人休息を与えること? しかし、休息を与えるのは、なかなかに難しい。それに、2人は軍人だから、より多くの戦果を上げることが生き甲斐かもしれない。軍人ではない伊藤博文には分からなかったが。
伊藤博文が悩んでいると、いつのまにか側近が執務室にいた。考え込んでいて、気づかなかったらしい。
「これは、あくまでも噂なのですが、ロシア帝国が南下してくるという話があちこちから聞こえています。『火のないところに煙はたたぬ』といいますし、もしもに備えて対策を考えてはいかがでしょうか?」と側近。
ロシア帝国が南下? またか。いつものことだ。放っておけばいい。
「我が国には関係のないことじゃないか。また、クリミアあたりに手を出すんだろう? 以前の戦争で負けているのに、ロシア帝国は、また同じことを繰り返すのか……」
伊藤博文は一蹴した。フランスからすれば一大事かもしれないが。なにせ、イギリスとも戦争状態なのだから。
「いいえ、違います。今度はオホーツク海との噂です」
「おいおい! それじゃあ、危機的なのは、我が国じゃないか!」
「ええ、ロシア帝国は不凍港が少ないですから、それを求めてでしょう。我が国を不凍港の一つにしようという考えでしょう」
伊藤博文は側近の言葉を聞いて驚くどころではなかった。ロシア帝国の海軍の強さは有名だ。大日本帝国の主力海軍はインドにいる。海軍大将である勝海舟も。つまり、現在残っている戦力で侵略を止める手立てはない。我が国の無双も、もはやここまでかもしれない。そのときだった。
「伊藤首相、どうやらお困りのようですね。自分に一つ案があります」
それは、扉にもたれかかった坂本龍馬の台詞だった。