ムクリと起き上がるシャリル。
それを見つめる、ジョージとミリカ達。
二人は、いきなり彼女が起き上がったのでビックリした。
「アンデッドに成ったのか?」
「だと・・・思うんだけど?」
シャリルは寝ぼけたような惚けっとした顔で周囲を見渡す。
彼女は首を左右に振り、二人の存在に気づく。
それから彼女は、装置の台から降りる。
折られて、曲がったままの首を揺らしながら近いて来る。
「おい? ホントにアンデッドに成ったのか・・・成ったんなら何で骨だけのスケルトンに成ってないんだよっ!」
「知らないわよ? ちゃんと私の血も飲ませたんだし大丈夫よ・・・たぶんね・・・」
ジョージが小さな声でヒソヒソ話をすると、ミリカはいい加減な事を答えた。
「たぶんって、お前・・・」
「きっと、スケルトンの姿じゃないのは、あの装置の魔力を吸いとり過ぎて別のアンデッドになったのよ」
呆れたジョージは黙ってしまい、両腕を組んだミリカは適当な考察を述べる。
「だと良いがな、もしかしたら・・・体はアンデッドに変わったが、精神は人間のままで・・・」
「私達を攻撃してくるとか・・・あり得無いわよね?」
そう話している内に、ゆっくり、だんだんとシャリルは二人に近付いて来る。
そして、彼女は二人の側に来ると両手で自らの頭を掴む。
グキッと折れ曲がった首を元の位地まで戻し、片膝を付き二人に頭を下げる。
「ジョージ様、ミリカ様・・・私、名をシャリル・シャルパンティエと申します・・・主様達への先程の無礼極まりない態度、誠に申し訳ございません」
シャリルは、ジョージとミリカ達に深い尊敬と崇拝の念の篭った眼差しを向けながら話す。
その姿は、薄い青色だった瞳は闇の様な深い青色に変化する。
肌同様明るかった金髪は青白く変色し、唇の色も青く成っていた。
青色と白の僧衣は、青い部分は深い紺色に、白い部分は紫色に変わる。
十字架の装飾等は、悪魔の紋章のように変わっていた。
「私の様なご主人様達に反抗的な愚か者を、アンデッドに生まれ変わせて頂いた上、配下に加えて頂き
二人は驚く。
まさか、自分達のスキルの効果がここまで高く。
シャリルが完全服従するとは思っていなかったからだ。
「ご主人様達・・・」
当のシャリルは、不思議そうに主である困惑したままの二人の姿を見つめた。
「あっいや? ちょっと驚いてな」
「そうよねっ! まあさか、こんなに私の血が効くなんてね?」
ジョージは、シャリルの生まれ変わった姿を見る。
彼は何か洗脳見たいで嫌なスキルだと思ったが。
ミリカの方は驚くばかりだった。
「そうでしたかっ! 私はもう人間という下等な存在ではなくご主人様達の忠実な僕・・・何なりとお申し付けを」
「うぅん、そうだなぁ?」
「そう・・・ねぇ~~?」
自分達への忠誠を誓うシャリルの態度に、ジョージとミリカ達は何をさせるか悩む。
「あの主様達、どうか私目の願いを叶えさせて頂きたいのですが」
「何だ、願いって人間に戻せってのは無理だぞ」
「叶えさせて欲しい願いは、何か言ってみて」
そんな時、不意にシャリルが逆に願い事を頼む。
ジョージとミリカ達は、それは何かと取り合えず聞いてみる。
「それは・・・今現在、私の体の中には溢れんばかりの闇のエネルギーと魔力が溜まっており、それを・・・それを、私しの仲間に分けて彼もアンデッドに・・・」
「仲間にって、アイツかあそこで横になっている剣士か?」
シャリルの願いを聞いた、ジョージ。
彼は近くの台に横たわるアレリオを指差す。
「確かアレリオ君だっけ? 私達も貴女だけじゃなく、彼も
「では、アレリオも配下に加えて頂けるのですねっ!!」
「まっ! 元々その積りだったしな、アンデッドが増えれば旅が楽になると思って、二人を襲った訳だし」
ミリカの言葉に喜び、思わず涙を流すシャリル。
そして、アレリオのアンデッド化にジョージも反対しない。
「ええっ? その積りだったけど、どうやら貴女がエネルギーを吸いとり過ぎたようで、装置が故障してしまっちゃったんだけど・・・」
早くアレリオを仲間にと、せがむシャリル。
彼女に対して、ミリカは少し前に何があったか説明する。
「貴女が彼をアンデッドに変えてくれるって言うなら反対しないわよっ! て言うか? 是非変えて上げて頂戴っ!」
「俺達は今までたった二人だけで戦って来たからな? はっきり言って戦力不足なんだよな、だから二人を襲ってアンデッドにしようと思ったんだけど・・・」
「では、よろしいのですねっ! 早速彼もアンデッドに」
ジョージとミリカ達が許可すると、シャリルはアレリオが横たわる台まで行く。
彼女は、彼の唇に自らの唇を重ね、静かにチュッと彼の遺体に彼女はキスをする。
『ぷふっ~~ふぅ~~ふ~~♥』
キスを続け、闇のエネルギーと魔力をアレリオの亡骸に送り続けるシャリル。
その努力の甲斐もあり、彼の亡骸の指が微かに動き、彼女は亡骸から唇をそっと離す。
「アレリオもう少しね? もう少しで貴方も私と同じ主様達の忠実なる僕に・・・」
シャリルはそう言いながら、愛しいアレリオの亡骸の指と腕の痙攣を見続けた。