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第32話 心の中の夢


『ああっ・・・懐かしい・・・あの後から二人で旅をするように成ったのよね』


 シャリルは思いでを回想して、アレリオとの出会いを懐かしみ、楽しかったと思う。



「なぁ本当について来るのか? 危険な旅になるぞ」


「ええ・・・巡礼と新天地への布教の旅なら許可すると教会のお許しも出たし、それにアレリオ、貴方のような強い護衛が入れば安心でしょうし」


 旅に出るとき、アレリオは危険な道中を案じてシャリルを気遣ったが。

 もう既に旅に出る事を決心した彼女は、説得されても聞く気は無い。



「護衛ねぇ? つったって路銀は少ないし、俺達が傭兵ギルドや準礼者協会の荷馬車の護衛とか魔物の駆除、野盗の討伐、それらの仕事をしながらの道中になるぞ」


「私は構いませんよ? それにいざ戦いになったら、貴方も私の回復魔法や薬草の知識が必用なはずです」


 旅に出たら、魔物や盗賊との幾多の戦闘が待ちわびている。

 だからこそ、アレリオには自分の回復魔法が必要だとシャリルは語る。



「それは・・・そうだが?」


「では問題有りませんねっ! さあ行きましょう」


 説得する積もりが、逆に説得されたアレリオは困り果てる。

 そして、シャリルは嬉しそうに歩き出す。


 その後も、二人は冒険を重ねて行く。

 ある時は、凶暴なワイルドキラーホースと戦い。

 また、ある時は大勢のゴブリンアーミーズと戦い旅を続ける。



「わあっ! ぐくうぅぅ?」


 シャリルは胸ぐらを捕まれ、草原の上に投げ飛ばされてしまい、左足を押さえる。


 そこへ暗く深い赤色の体毛の魔獣。

 マルーンベアーが、長く鋭い爪を振り下ろそうとしていた。

 シャリルは恐怖し、逃げ出そうとしても左足の怪我のために負い動けないのだ。

 そして、マルーンベアーが、その爪を死神の大鎌の如くシャリルに振り下ろす。



「くうっ!?」


「シャリルうぅっ!!」


『ガンッ』


 シャリルは死を覚悟したが。

 寸でのところで、アレリオは横から助けに入り。

 マルーンベアーの爪を長剣で受け止める。



「アレリオ、逃げてっ! 貴方だけでも生き延びて」


「駄目だあぁっ!? 君をおいてはいけない、君は何があっても、例えこの命に変えても守って見せるっ!!」


 シャリルの叫び声に、アレリオはそう答えると。

 マルーンベアーの爪と、長剣の鍔迫り合いを続ける。



「はあああああぁっ!! シャリル、今だーーーー!? 早く雷撃魔法をっ! 早ーーくっ!!」


 アレリオの言葉を聞いて、シャリルは、ハッと我に帰り。

 マルーンベアーの顔目掛けて雷撃魔法を放った。



「サンダーショット」


 放たれた雷撃は、マルーンベアーの顔に当たったので、奴は悶える。



「今のうちにぃっ! たああーーーー!!!!」


 アレリオは、マルーンベアーに向かって長剣を構え走りだし。

 そして、その頭を長剣の切っ先が貫き絶命させる。



「はぁぁっ? 終わっ・・・たか、シャリル、無事か・・・」


「ええ、足に怪我を負ったけど大丈夫・・・消毒液をかけて包帯を巻けば取り合えず近くの村まで歩けるわ」


 戦いに決着が着くと、アレリオは背後で地面に横たわるシャリルを心配したが。

 足を負傷した事以外は、彼女は何とか無事だった。



「そうか・・・良かった、さあ手を貸そう」


「ええっ有り難う・・・その・・・さっきは私を何があっても私を・・・」


 アレリオが手をかそうと右手を伸ばすと、シャリルは先程の言葉を思い出す。



「あっと・・・そっ! それはその、えとーー」


 その言葉を、アレリオも思い出した。

 あたふたと彼は焦り、上手く否定しようと考える。



「クスッ? ふふふっ!」


「あっはははっ!」


 シャリルが笑い出すと。

 アレリオも恥ずかしそうに笑い、近くの村に向けて歩き出した。



『こんな事になるなら旅を続けなければ良かった・・・それにしても・・・ここはどこなの?』


 シャリルは一人、何もない暗い空間に浮かんでいた。そこは広くて暑くも寒くもない。



『私は、あの二人のアンデッドに負けて死んだはずでは?』


『そうよっ!』


『貴女は死んだの』


『そして霊魂だけの存在に成ったのよ』


 死後の世界に来たのかとシャリルは考えたが、そこに謎の人物達が現れる。

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