『ああっ・・・懐かしい・・・あの後から二人で旅をするように成ったのよね』
シャリルは思いでを回想して、アレリオとの出会いを懐かしみ、楽しかったと思う。
「なぁ本当について来るのか? 危険な旅になるぞ」
「ええ・・・巡礼と新天地への布教の旅なら許可すると教会のお許しも出たし、それにアレリオ、貴方のような強い護衛が入れば安心でしょうし」
旅に出るとき、アレリオは危険な道中を案じてシャリルを気遣ったが。
もう既に旅に出る事を決心した彼女は、説得されても聞く気は無い。
「護衛ねぇ? つったって路銀は少ないし、俺達が傭兵ギルドや準礼者協会の荷馬車の護衛とか魔物の駆除、野盗の討伐、それらの仕事をしながらの道中になるぞ」
「私は構いませんよ? それにいざ戦いになったら、貴方も私の回復魔法や薬草の知識が必用なはずです」
旅に出たら、魔物や盗賊との幾多の戦闘が待ちわびている。
だからこそ、アレリオには自分の回復魔法が必要だとシャリルは語る。
「それは・・・そうだが?」
「では問題有りませんねっ! さあ行きましょう」
説得する積もりが、逆に説得されたアレリオは困り果てる。
そして、シャリルは嬉しそうに歩き出す。
その後も、二人は冒険を重ねて行く。
ある時は、凶暴なワイルドキラーホースと戦い。
また、ある時は大勢のゴブリンアーミーズと戦い旅を続ける。
「わあっ! ぐくうぅぅ?」
シャリルは胸ぐらを捕まれ、草原の上に投げ飛ばされてしまい、左足を押さえる。
そこへ暗く深い赤色の体毛の魔獣。
マルーンベアーが、長く鋭い爪を振り下ろそうとしていた。
シャリルは恐怖し、逃げ出そうとしても左足の怪我のために負い動けないのだ。
そして、マルーンベアーが、その爪を死神の大鎌の如くシャリルに振り下ろす。
「くうっ!?」
「シャリルうぅっ!!」
『ガンッ』
シャリルは死を覚悟したが。
寸でのところで、アレリオは横から助けに入り。
マルーンベアーの爪を長剣で受け止める。
「アレリオ、逃げてっ! 貴方だけでも生き延びて」
「駄目だあぁっ!? 君をおいてはいけない、君は何があっても、例えこの命に変えても守って見せるっ!!」
シャリルの叫び声に、アレリオはそう答えると。
マルーンベアーの爪と、長剣の鍔迫り合いを続ける。
「はあああああぁっ!! シャリル、今だーーーー!? 早く雷撃魔法をっ! 早ーーくっ!!」
アレリオの言葉を聞いて、シャリルは、ハッと我に帰り。
マルーンベアーの顔目掛けて雷撃魔法を放った。
「サンダーショット」
放たれた雷撃は、マルーンベアーの顔に当たったので、奴は悶える。
「今のうちにぃっ! たああーーーー!!!!」
アレリオは、マルーンベアーに向かって長剣を構え走りだし。
そして、その頭を長剣の切っ先が貫き絶命させる。
「はぁぁっ? 終わっ・・・たか、シャリル、無事か・・・」
「ええ、足に怪我を負ったけど大丈夫・・・消毒液をかけて包帯を巻けば取り合えず近くの村まで歩けるわ」
戦いに決着が着くと、アレリオは背後で地面に横たわるシャリルを心配したが。
足を負傷した事以外は、彼女は何とか無事だった。
「そうか・・・良かった、さあ手を貸そう」
「ええっ有り難う・・・その・・・さっきは私を何があっても私を・・・」
アレリオが手をかそうと右手を伸ばすと、シャリルは先程の言葉を思い出す。
「あっと・・・そっ! それはその、えとーー」
その言葉を、アレリオも思い出した。
あたふたと彼は焦り、上手く否定しようと考える。
「クスッ? ふふふっ!」
「あっはははっ!」
シャリルが笑い出すと。
アレリオも恥ずかしそうに笑い、近くの村に向けて歩き出した。
『こんな事になるなら旅を続けなければ良かった・・・それにしても・・・ここはどこなの?』
シャリルは一人、何もない暗い空間に浮かんでいた。そこは広くて暑くも寒くもない。
『私は、あの二人のアンデッドに負けて死んだはずでは?』
『そうよっ!』
『貴女は死んだの』
『そして霊魂だけの存在に成ったのよ』
死後の世界に来たのかとシャリルは考えたが、そこに謎の人物達が現れる。