目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

魔法の起源



むかしむかし、まだ“理”という言葉すらなかった頃。

人々は、ひとりの神に救いを求めて生きていた。


その神は、

大地に実りを与え、

雨を呼び、

病を癒し、

争いを鎮め、

生きとし生けるものすべてに、等しく慈悲を注いだ。


人々は畏れと共にその神を崇め、

やがてこう呼ぶようになる。


──**魔神様(まじんさま)**と。


けれど、ある日。

とある男が、神を「研究対象」として見た。


男は巧みに神を騙し、近づき、

その力を“手に入れる”ことだけを願っていた。


その裏切りの果てに、神は砕けた。


怒りも悲しみも見せぬまま、

ただ静かに、崩れ落ちるように。


そして次の瞬間、

神の身体は世界を覆うほどの爆発を起こした。


神の体内からあふれ出た“魔力の粒子”は、

風に乗り、大地に染み、海を渡り、空に溶け――

世界そのものに混じっていった。


やがて、

その魔力に“適応”した者たちが現れる。


彼らの血は、熱く。

肉体は、強靭に。

魂は、かすかに神の記憶を宿した。


彼らは、“人”でありながら、“人”を超える存在となった。


この世の理を超えた力──

魔法を扱う者たち。


人々は彼らを、こう呼ぶようになる。


──**魔人(まじん)**と。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?