むかしむかし、まだ“理”という言葉すらなかった頃。
人々は、ひとりの神に救いを求めて生きていた。
その神は、
大地に実りを与え、
雨を呼び、
病を癒し、
争いを鎮め、
生きとし生けるものすべてに、等しく慈悲を注いだ。
人々は畏れと共にその神を崇め、
やがてこう呼ぶようになる。
──**魔神様(まじんさま)**と。
けれど、ある日。
とある男が、神を「研究対象」として見た。
男は巧みに神を騙し、近づき、
その力を“手に入れる”ことだけを願っていた。
その裏切りの果てに、神は砕けた。
怒りも悲しみも見せぬまま、
ただ静かに、崩れ落ちるように。
そして次の瞬間、
神の身体は世界を覆うほどの爆発を起こした。
神の体内からあふれ出た“魔力の粒子”は、
風に乗り、大地に染み、海を渡り、空に溶け――
世界そのものに混じっていった。
やがて、
その魔力に“適応”した者たちが現れる。
彼らの血は、熱く。
肉体は、強靭に。
魂は、かすかに神の記憶を宿した。
彼らは、“人”でありながら、“人”を超える存在となった。
この世の理を超えた力──
魔法を扱う者たち。
人々は彼らを、こう呼ぶようになる。
──**魔人(まじん)**と。