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第7話 ヒデオは自分のアパートに戻る

 いやあ、雪園のお料理美味しかったなあ。

 たぶん、目が飛び出るぐらい高いんだろうね。

 カワイ子ちゃん三人と高橋社長と高級中華なんて初めての体験だからワクワクしたよ。

 おじさんは横浜にも居た事があるんだけど、中華街とかは行った事がないんだよね。

 友達がいないと、ああいう所は楽しく無いしね。

 行ってラーメンとチャーハンを頼んで食べるとかは、あまり出来なさそうだし。


 とりあえず、明日から『サザンフルーツ』の子たちと一緒に居てガードをすれば良いみたいだ。

 映画の『ボディガード』みたいだね。

 守るのはゴリ太郎とゴリ次郎だけど。


 という訳で、美味しい物をたらふく食べて、老酒とかも飲んで、良い気分になってアパートに帰って参りました。

 明日は川崎駅前にあるリーディングプロモーションの事務所に行けば良いとの事。

 朝はミキちゃんが一報いれて起こしてくれるみたいだ。

 ミキちゃんはリーダーだけあってしっかりしているね。


 鍵を開けて狭いながらも楽しい我が家に入る。

 なんだか、大変な一日だったなあ。

 早くスマホの使い方を覚え無いとなあ。

 おじさんはDチューバーとしてはやっていけないだろうけど、知り合った女の子たちを守るぐらいは出来るでしょ。


『うほうほ』

『うほうほ』


 ゴリ太郎もゴリ次郎も同じ意見のようだ。

 俺はジャージに着替えて万年床に潜り込んで眠った。

 ゴリ太郎もゴリ次郎も畳の上に座り込んだ。

 大きくて邪魔だけど、まあしょうが無いね。

 明日も良い事があればいいなあ。

 すやあ……。



 ビンバッチョロピピロン!!

 ビンバッチョロピピロン!!


 なんだなんだ、なんだこの変な音は!!

 どこからしているっ!!


 ビンバッチョロピピロン!!

 ビンバッチョロピピロン!!


 音の発生源を探ると俺のズボンのポケットで、サッチャンに貰ったDスマホが途轍もない間抜けな音を出して騒いでいた。

 さすがは悪魔の作ったスマホだ、常人には思いつかない呼び出し音が設定してある。


「はい、もしもし」

『あ、ヒデオさんですか、ミキです』

「ああ、おはようさん。モーニングコールかあ、びっくりしちゃったよ」

『事務所の場所は解りますか?』

「市役所の裏でしょ、大丈夫大丈夫」

『では、お待ちしていますね』

「はい、ありがとうね」


 ミキちゃんからのモーニングコールだったか。

 びっくりしたよ。

 いつの間にか朝なんだなあ。


「おはよう、ゴリ太郎、ゴリ次郎」

『うほうほ』

『うほうほ』


 さあて、しゃっきりして新しい職場に向かおうか。

 昨日まで働いていた冷凍食品倉庫は日雇いなので、連絡の必要は無いんだね。


 冷蔵庫から菓子パンを出してもっしゃもっしゃと食べる。

 ああ、牛乳が無くなったなあ。

 帰りに買ってこないとね。


 色々と用をすませて、施錠してアパートを出る。

 国道を渡って駅前地域に入る。

 ゴリ太郎ゴリ次郎を連れて歩くのだ。


 市役所を目指して歩いて、路地に入った所のビルに入る。

 ここの五階にリーディングプロモーションの川崎事務所はある。

 本社は五反田らしいよ。


 チンと音を立ててエレベーターが止まるとリーディングプロモーションと書いたドアがあった。


「おじさん、ここは関係者以外立ち入り禁止よ」


 ドアの前で、綺麗な女の子に声を掛けられた。


「いや、おじさんは関係者で」

「嘘、アイドルオタクの人でしょ、雰囲気で解るよ」

「ちがうよ~」


 がちゃりとドアが開いて山下さんが出て来た。


「お、ヒデオさん、おはようございます。『サザン』のみんなが待ってますよ」

「あ、そうですか。じゃあ、失礼するね」

「本当に関係者だったんだ」

「丸出英雄って言うんだ、よろしくね。護衛の仕事をしてるよ」

「護衛のDチューバーさんだったのか。私は玉手カスミよ」

「カスミちゃんか」


 山下さんに連れられて、俺は事務所の中を歩いた。

 『サザンフルーツ』の子たちは応接室に居た。


「おっはよー、ヒデオ」

「おはようございます、ヒデオさん」

「おはようございますよ」

「おはよう、みんな、山下さんもありがとうございます」

「後で来てくれ。俺が護衛部のチーフだから、いろいろ申し送る事があるよ」

「わかりました、後でうかがいます」


 山下さんが直接の上司みたいになるのかな。


「なにあの寝癖オヤジ、ちょー受けるんですけどっ」

「『サザン』の護衛っぽいよ、凄腕らしい」

「えー、絶対モブでしょー、強そうには見えないよ~」


 カスミちゃんが、なんだかギャルっぽい子とこちらを見て噂をしていた。


「なによ、ヒデオが……、ヒデオのゴリちゃんがどんだけ強いかもしらないでさ」

「まあ、良いんだよ、ヒカリちゃん」

「なんだか、ヒデオが馬鹿にされると、『サザンフルーツ』の格が下がったみたいで嬉しくない」

「まあまあヒカリちゃん」

「ヒデオさんの良さは私たちだけで独占すればいいんですよう」

『うほうほ』

『うほうほ』


 いや、ゴリたちよ、慰めはいらんぞ。


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