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干し草系OL、霊魂共存されましたけど復讐のチャンスですか?──幽霊と始めるリベンジライフ開幕!
干し草系OL、霊魂共存されましたけど復讐のチャンスですか?──幽霊と始めるリベンジライフ開幕!
はなぢのおやぶん
現代ファンタジー都市ファンタジー
2025年04月13日
公開日
6,114字
連載中
根暗で化粧っけのない私は〝干し草系女子〟と揶揄されていた。気にしない様で結構気にしてる。エゴサーチに余念はない。 そんなある晩、風呂場で倒れ臨死体験をしてしまう。肉体を眺めながら、このまま死んじゃおっかと躊躇してたら、知らない女性の霊魂が自分の肉体に入り込んでしまった。勿論、私も戻ったけど気がつけば自分とは真逆の彼女と共存することに。 全てはここから始まる。私の逆転劇が──

第1話 風呂場で死んだら、干し草から双子草になりました。

風呂場でばたんっと倒れた。意識が遠のいていく──


のぼせたか。

いや、ヤケ酒をあおって長風呂なんていう無謀なコンボをかました時点で、自滅の未来は見えていた。

それにしても、よりによって安息の地、六畳一間の風呂場で?全裸昇天ってどういうこと?

いやいや、残念すぎるでしょ。

〝ざまぁ〟の準備だってしてたのに……!

絵梨花に一泡吹かせる日を夢見て、証拠も水面下でかき集めてきたのに!!


気がつけば、裸で仰向けに倒れている自分を天井から眺めていた。


おっぱいちっちぇな。(いや、そこじゃない)

容貌も人並みね。いえ、中の上くらいかしら?

まあどうでもいいわ、そんな所感。

それよりも、今の私は幽体離脱してるという事実のほうが問題じゃない?


戻らなきゃ。早く──

……って思ったけど、ここで躊躇してしまう。


生きててもそんなにいいことないしね。仕事は地獄、恋愛は未経験、友達いない──

正直、生にしがみつく動機が見つからない。

いっそこのまま死んじゃおっか?


そう感じるのも、あのクソ職場が、私の心をじわじわ腐らせていたのだ。



私は密かに給湯室で待機する。裏手の自販機コーナーに絵梨花が取り巻きとサボりに行ったのを見逃さなかったからだ。

「絵梨花様、お聞きになりましたか? 謝恩会の幹事は東薔薇主任だって!」

「ええ、存じてますわ。でも、問題は会計ですわねぇ」

「はいはいぃ~、それなんですう。よりによって今回、あの〝干し女〟ですから!」

けたたましい笑い声が筒抜けに聞こえてくる。そっと携帯を自販機の隙間に忍ばせた。自分の誹謗中傷を録画するために。


──干し草系女子。略して〝じょ〟。


それが入社以来、私の〝仇名〟だ。

恋愛放棄、社交性皆無、休日は家から出ず、干物通り越して干し草。

でも本当の私は、お花と恋愛小説と証拠収集に囲まれて暮す、ちょっとだけ内気なOLだ。もちろん恋もしたいし、幸せになりたい。


ここで、遅ればせながら自己紹介をしとく。

私は綾坂花(二十四)──上場企業・購買部外注課所属。

人付き合いは超絶苦手だけど、根は真面目。エゴサ大好き、気にしい属性。そういう遺伝子だと結論付けている。


そして、同じフロアには敵が六名存在する。


池園絵梨花(二十五)── スタッフリーダー兼主任代行。

一年先輩で親が役員の七光り様だ。自分磨きに余念がなく玉の輿を夢見る腰掛け女で、狙っているのは東薔薇主任。取り巻きから〝素敵女子〟などと持て囃されているが、見当違いも甚だしい。狙った獲物の前にだけ女子力をアピールする馬鹿で〝あざとい女〟だ。


それに情けなくも引っ掛かりつつあるのが、この男。


東薔薇ハルト(二十八)── 部品購買課主任。

由緒ある家柄の御曹司で、御尊父様は官僚だ。ハンサムで人当たりが良く仕事もできる。将来の幹部候補として〝素敵男子〟などとチヤホヤされているが、私に言わせれば〝残念男子〟。取引先の営業担当者に接する態度は見るに堪えない。バイヤーだからって神になったつもりなのか、納期前倒しや価格低減の強要はもはや脅迫まがい。人間性を疑ってしまうほど酷い野郎だ。


あとの取り巻きは名前を晒す価値もないが、一応記しておく。


山本 節子(三十九)──威圧力マシマシお局。

橋口 美憂(二十二)──パープー系新卒女子。

佐藤 拓也(二十四)──同期のくせに見て見ぬふりなボンクラ。

橘 亮太(二十三)──存在感ゼロのモブ男子。


彼ら彼女らに囲まれて、私は毎日、静かに削られていた。


ともあれ〝謝恩会〟などとくだらないイベントが元凶なのだ。

そして、今年はついに「会計係」が私に回ってきた。パス不可。接点不可避。

それがもう、どうしようもなく、憂鬱で、嫌だった。


だけど、死んで終わりってどうよ?

これまでこっそり録りためた音声、録画、全部無駄になるの?

私、何のためにエクセルで〝ざまぁ計画書〟作ったと思ってんの?

……でも、相手の後ろ盾は〝役員〟と〝官僚〟。

正直、勝ち目は薄い。

人事や労組に訴えても、「はぁい、検討しまぁす」で終わる未来がチラ見えする。


だから──だから、私は今、戻るか否かで揺れていた。


──と、その時だった。


ふわりと空間が揺れて、青白い光が現れる。

浮遊する光はゆっくりと人の形に変わっていき、長い髪の女の姿になった。


顔がよく見えない。でも、雰囲気は……貴族の未亡人?


「ひ、ひぃぃっ……ま、まさか、亡霊……!?もしかしてこの世の未練が強すぎる系!?」


その〝彼女〟は、スッと私の方を見たかと思うと、優雅に口を開いた。


『ごめん遊ばせ~』


しゃ、喋った!?いや、軽すぎるだろ!?なにこの華麗な怪談モード!


「ちょ、ちょっと待って!それ、私の身体だから!勝手に入らないで!通報するわよ!いや、成仏させるわよ!!入るなーッ!!!」


私も慌てて肉体に滑り込んだ。必死で押し戻すが、お互いせーのでズドンと魂IN──


……はい、ここから始まりました。


干し草系女子と、勝手に入り込んだ亡霊の〝二人暮らし(in私)〟


そして、社内ざまぁ逆転劇の開幕です。




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