この世には、数多の猿や人間を睡眠へと堕としてきた天下無双の布団が居る。
◇
布団には生まれつき人間と同じような知能と自我があった。布団は人間達とレスリングなどで遊んだり、人間達と授業を受けてみたり、人間達と一緒のベットに寝たりなど、『布団』という所属には当てはまらないような離れ業を度々起こしていた。
そんな彼にも夢が出来た。人間達と過ごしているうちに布団は『色んな人を眠らせたい』と思うようになったのだ。
彼は夢を叶えるため、努力した。独学で睡眠に最適なハーブを取り寄せたり、フッカフカな布団にするために布団ケアに通い詰めたり。
◇数年後
「布団は最強の布団にして、全ての布団の頂点に立つ布団になったぞー! 大富豪や王族にも愛される、布団は布団になったんだー!」
布団は天下無双の布団となった。不眠症など一発で治す。人類にもてはやされる布団に成ったのだ。
無論、本当に天下無双の布団なのか訝しむ人達もいた。しかし布団は、そんな人達をも布団に眠らせて、効果を実感させてから黙らせた。
時期に意を唱える人達も居なくなり、布団は人気者になった。
◇
そんな布団にある挑戦者が現れた。挑戦者と言っても猿なのだが。しかも踊り狂っている猿。
どうやら、この猿はダンスの踊りすぎで不眠症になってしまったようだ。
「布団は猿でも受け入れる」
布団はそう言って猿に近づく。すると、踊り狂った猿が容赦ない爪の一撃を布団に叩き込んできた。
爪痕から綿が飛び出す布団。しかし布団は諦めなかった。『例え相手が人間じゃなかったとしても、布団の眠らせる力は天下無双なんだ!』という信念を抱きながら猿に尚も近づく。
「キキーッ! キキーッ!」
踊り続けながら抵抗を続ける猿。しかし、それをも布団は己の体を使って包み込もうとした。
猿の攻撃でみるみるボロボロになっていく布団。それでも布団は猿を離さなかった。ほどなくして、だんだんと抵抗が小さくなっていき、ついにいびきをかきはじめた。
布団は猿に勝ったのだ。布団は嬉綿をふんだんに流して大喜びした。
その後、天下無双の布団VS不眠症ダンサー猿は名勝負として語り継がれることになったという。
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