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第二章 七話「新たな友人」

「とりあえずは、条件を満たしてランクアップ試験を待つしかないな。試験の受注条件はどうなってる?」


「んー。おっ、あった。クエストを10件達成すること……か。まぁ、どんなクエストがあるかわかんねぇけど、内容としてはそんな難しくはなさそうだな」


 ビギナーランクというだけあって、条件達成はそんなに難しくはなさそうだ。それに次にランクアップ試験があるのは夏の終わり頃。時間的にもまだ余裕がある。


「じゃあ、当面は生活資金を稼ぐついでにクエストを受けつつ、授業を受ける感じだね!」


「まぁそうするのが一番よさそうだし、そうするか」


「とりあえず、夕飯にしないか?」


 ルークの提案で、三人はそのまま3階にある食堂へと移動する。階段を上り、目的の食堂につくとフロア全体に広がる美味しそうな匂いと、あちこちの机が学生たちで埋め尽くされている光景が広がっていた。


 ダンジョン帰りでそのまま寄れるからというのもあるだろうが、流石の人気ぶりに座席を確保するのが難しそうだ。


「ルーク、ガイ~!こっちこっち!」


 いつの間にか、場に馴染んで席を確保するララ。呼ばれるがままに二人はララの押さえた席に向かうが、その席には既に先客の三人がいた。


 制服の袖の線を見る限り同じ一年生のようだ。思わず戸惑いを見せる二人に、ララは先客である三人の後ろに回り込む。


「紹介するね!右のイケメンがメイジス君で、真ん中の賢そうな人がリオ君!そんでこっちの可愛い子がモニカちゃん!入学式で仲良くなったんだ~。三人でパーティ組んでるみたいだよ!」


 ブロンド色の前髪を横に流し、肩にかかる程の髪で鼻が高く透き通るような緑色の瞳はまさに美形のメイジス。


 反対に、目を細め睨むように見るリオ。茶髪の前髪をかき分け濃い茶色の瞳、右目の目尻のホクロが印象的。


 そして、ララが後ろから抱き着く小柄の女の子が、モニカ。ミディアムボブにゆるくパーマがかかったピンクの髪。おっとりとした表情で、確かに可愛い。ララも小柄な方だが、さらに一回り小さく、人形のようだ。


「初めまして、ルークです」

「俺はガイだ」


 二人は挨拶をすると手のひらを前に出す。それをみて、メイジスが席を立ち、二人と握手する。


「メイジスだ、よろしく頼むよ!」


「私はリオ。眼鏡を忘れてしまって上手く視えないんだ。目つきが悪かったら申し訳ない」


「こ、こんばんわ……。モニカ……です」


 それぞれが挨拶をしながら握手を交わしていく中、ルークが恥ずかしそうに握手を交わすモニカを見て既視感を抱く。


(なんか、どこかで見たことがあるような……)


ルークがモニカを見つめながら考えていると、メイジス達は再び席につく。


「ささ、ルーク達も座ってくれ。一緒に食事にしよう!」


 どうやらメイジス達が気を利かせてくれたのか、席に余裕を作って空けてくれたようだ。


「ありがとう、助かる」


 お言葉に甘えてルーク達もメイジス達の向かい側に座り机を囲む。すると、今度はリオがメニュー表を三人の前に広げて出してくれた。


 三人はのぞき込むようにメニューを見るが、メニュー名と一緒に写真も一緒に載っており、見る限りどれも美味しそうで選ぶのに迷う。


 そうこうしているうちに、店員のおばちゃんがオーダーを聞きにきた。


「注文は決まったかい?」


「僕たちはもう頼んであるから、ルーク達で頼んでしまっていいよ」


 メイジスに言われ、ルーク達はそれぞれにメニューを見ながら注文する。


「おっし、じゃあ俺はリップスと香草チキンのステーキで!あ、あとバケットも!」


 リップスとは、リンゴを絞ってミルクと合わせたジュースで、甘いミルクの後ろでほのかに残る酸味がより甘さを引きたてると広い世代に人気の飲み物でリンゴが特産のアストレア王国ではメジャーな飲み物なのだ。


「俺もリップス。あとワイルドボアのシチューとバケット」


「んー、私は水とアストレアポークと春野菜のペンネで!」


「はいよっ!ちょっと待ってな!」


 オーダーを聞くとおばちゃんは奥へと入っていき、注文された飲み物を先に持ってきてくれた。待ってましたと言わんばかりにララがグラスを手に持ち、立ち上がる。


「ね!ね!せっかくこうやって集まってるわけだし、乾杯しようよ!」


 皆が困惑している中、思いもしない人が話に乗っかる。


「わ、わたしも、そういうのしたことない……から、やってみたい!」


 少し恥ずかしそうに小さくグラスを掲げたのはモニカだった。モニカが乗り気なのが余程珍しいのか、メイジスとリオが驚く。


「僕らは幼馴染だが、モニーがそんな風に言うのは初めて見た気がするな!」


「私も正直、驚いているよ。ララの存在はモニーに良い影響を与えているのかもしれないね」


 二人のモニカに対する目線がどことなく親や兄弟といったものに似ているのは、モニカが妹気質なのもあるだろうが、そのか弱そうな風貌と性格に寄せられているのだろう。


「ははっ、ララに影響されてるんだとしたら、絶対将来、悪影響に変わるね!」


 ガイがなんの悪びれる様子もなく素でそういうと間髪いれる間もなくその頭にララのゲンコツが落ちる。


「次言ったら殴るよっ!」


「いってぇ!もう殴ってんじゃねーかッ!」


 そんなコントのような会話に皆が笑う中、ルークが間を取り持つようにグラスを掲げた。


「じゃあ、そんな夫婦漫才が見れたこの集まりにカンパーイ」


「は?!」

「ちょっ、なにそ――」


「「「かんぱーい!!」」」


 ルークの適当な音頭に戸惑いを見せる二人を置いておいて他の者たちで乾杯を済ませる。


 程なくして、料理が運ばれてきて食べ始めるが、どれも格別に美味しく、とても学校の中とは思えない。そして何よりも、一つ一つの量が多く食べ盛りな学生たちには嬉しい量だった。


 「ところで、皆はどうして入学を志したんだい?」


 一通り食事を終えると、メイジスが問いかけてきた。アストレア学園といえば、先進校で有名だからってので受ける者が多いのも事実だが狭き門の為、最初から割り切って他の学校を志望することも少なくない。そんな中で、本気でこの学校を受けるものはそれぞれ何かしらの理由を持っているものは少なくない。


 そんなメイジスの問いに先に答えたのはガイだった。

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