目次
ブックマーク
応援する
11
コメント
シェア
通報

第二章 六話「ビギナーランク」

「ようこそ!学園ギルドへ!受注ですか?報告ですか?」


 受付カウンターに座る受付嬢のお姉さんがルーク達に声をかける。


「すみません、俺たち初めて来たんですけど登録できますか?」


 3人が同じカウンターに並ぶ中、ルークが先導して言うと受付嬢のお姉さんは、ニコッと微笑みいくつかの紙を出す。


 ルーク達は各々紙を確認すると、登録用紙、注意事項、主な仕組みと書かれた3枚の紙が人数分あった。


「登録ですね!では、まず登録用紙と書かれた紙の項目に沿って名前と得意とする役割、使用可能な魔法属性等を記入して、MADと一緒に出してください」


 三人は言われた通り、登録用紙の項目を埋めてMADと一緒に提出すると、受付嬢のお姉さんは書類とMADを確認して不備がないことを確認すると、それぞれにMADを返す。


「確認が終わりました!ギルドカードが出来上がるまでに簡単に説明しますね」


 受付嬢のお姉さんがそういうと、説明を始める。


「学園ギルドは普通のギルドとほとんど同じ仕組みになっていますが、違う点もあります。学園ギルドでは、定期的に行われるランクアップ試験に合格すると最大Sランクまで昇格することができ、それぞれのランクに合わせたクエストを受注することができます。普通のギルドでは最大SSSランクまで昇格できるので、それが違いの一つですね。ちなみに、ここで得たランクは学園卒業後そのまま普通のギルドに所属しても引き継がれますよ!」


「そいつは便利だな!将来、冒険者として活躍することも視野に入れれるわけか。確か仮想ダンジョンは負けたとしても死ぬことがないからクエストどんどん受けた方がよさそうだな」


 学園が所有する、仮想ダンジョンは学生のうちしか入れないことでも有名だが、入学試験の時と同じ仕組みが応用されており、仮想ダンジョン内で死んでも学園ギルドに強制転送されるため死ぬことがない。つまり安全に実戦的経験を多く積むことが出来るのだ。


「その通りですね。ただし、良いこと尽くしではないのも事実で、報酬のポイントが普通のギルドのレートの十分の一しかなかったりするのでそこは仮想ダンジョンならではの仕様になっています。また、ランクアップ試験も条件が厳しく、ちゃんと実力が伴っていないと昇格するのは厳しいものとなっていますね」


 世の中上手くできているとは言ったものだが、まさにそれを体現するようなシステムが取り入れられている。ガイのように考える者も少ないだろうが、そんな簡単にはいかないのが摂理というもの。


「仮想ダンジョンってパーティとか組んだら報酬とかってどうなるんですか?極端な話だと、EランクとSランクでパーティ組んでSランクのクエストとか周回すれば結構稼げますよね?」


 ふと、疑問に思ったのかララが質問をする。


「ランク差があるパーティでは、一番ランクが低い人のランクレベルでしかクエストを受けることが出来なくなっていますね。報酬に関しては均等割りされることになっていますが、討伐履歴や活躍情報は記録されていますので、詳しくは話せませんが意図的な妨害行為等を行うとペナルティがありますので、ご注意してください」


「はーい!」


 元気に返事するララをみて受付嬢のお姉さんがクスっと笑うと、はっ!となって少し恥ずかしくなって照れるララ。それをみて、ルークとガイもクスっと笑う。


「もー!笑わないでっ!」


「わるいわるい、っふ」


 謝りながらも笑いそうになる口を手で押さえるガイ。そんなガイをみて、ララはよりムスッとした表情を浮かべる。


(ランク差があってもパーティが組めるなら、上位ランクの人に条件持ちかけてキャリーしてもらうことも出来るってことだよな?でも、学園側もそれはわかってて容認してるってことは、なにかあるって考えるべきだな……)


 ルークは言葉の裏を読み取り推測を建てるが、その読みはあながち間違いでもない。ただ、それを知るのはまだ先の話。


「以上になりますね。何か質問とかありますか?」


 三人はそれぞれ、顔を見合わせて確認するが特にないことを確認すると顔を横に振る。


「では、こちらギルドカードになります!クエストの閲覧、受注、報告は受付カウンターでのみ行えますので、その際はギルドカードをお持ちになっていらしてください」


「「「ありがとうございます!」」」


 三人は、ギルドカードを受け取り受付カウンターを離れる。端っこの方に移動するとそれぞれのギルドカードを確認するとカードには紙に書いた内容とランクが書かれており、裏にはランクごとの魔物の討伐数、クリアしたランクごとのクエスト数が記載されていた。


「ん?ビギナーランク?なんだこれ」


 聞いたことのないランクに戸惑いを見せるガイ。ルークとララも確認するも、二人も同じようにビギナーランクと記載されている。少し考えた後ルークが口を開く。


「これ、Eランクの下ってことじゃないのか?」


「は?Eランクが一番下のランクじゃないのかよ」


「私もルークの推測が正しいと思う。ランクで言ったら確かにEランクが一番下だけど、私たちってまだランクアップ試験一回も受けてないもん。更に下があってもおかしくないと思う」


 これにはガイも流石にため息が漏れる。冒険者の中でもEランクといえば一番底辺。ギルド登録さえ通ってしまえばなれるようなランク。その更に下なんて、想像するだけでもどういう仕事があるのか想像がつく。


 それは、皆が嫌がるような雑務や肉体労働などが多い。とてもじゃないが魔物討伐クエストなんて皆無だろう。しかし、仕組み自体はよくできている。冒険者は、魔物達と戦いその功績と実績をもとに華々しく大成していくが、本質は国、民への奉仕活動による貢献が仕事。皆が嫌がる底辺の仕事なんて奉仕活動としては基礎中の基礎。それを最初に理解させるこの仕組みは冒険者とはなんたるかを示すにはもっとも効率的と言える。


 ガイの反応を見る限りでは、意図を理解できていないようだが。


「絶対雑務しか受けられないだろ、これ。さっさとランクアップしてーけど、これ見る限り試験があるのは夏の終わり頃だし、受けるにも条件があるみたいだ」


 ガイはMADでランクアップについて調べるも、そう簡単に次のランクというわけにはいかなさそうだ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?