「諸君、入学おめでとう。様々な試験を乗り越え、今君達は狭き我が校の門を叩くことが出来た、それは誇ってよい。だが、これはまだ始まりに過ぎない。これからの学園生活は学び舎であると同時に沢山の選択を迫られるじゃろう。自分が何を学び、どういう道を辿るのか、君達の活躍を心待ちにしておるぞ」
ヴェルディ学園長の挨拶が終わると拍手があり、次に別の先生と入れ替わる。
「ここからはヴェルディ学園長に代わり、学園生活について進行させてもらう。まず手元のパンフレットを開いて欲しい」
各々手元のパンフレットを開き、先生の話に耳を傾ける。
「まず、我が校は完全寮制で長期休暇を除き校外に出ることが出来ない。そして周知の事だと思うが我が校ではランカー制度を取り入れている。これは、在学生の強さを現したもので、成績や校内の学園ギルドを通し仮想ダンジョンでの活躍に応じてポイントが手渡された端末に加算されていく」
先生の説明と共に壇上後ろのスクリーンに映像が映し出され説明が続く。
「通常、我が校では、1年に一度200万レアの学費がかかり徴収されるが、このランカー制度で貯まる1ポイントが1レアとして扱われ、ポイントで払うこともでき、校内での様々な買い物、施設の利用に使える。ちなみにランクが高ければそれに応じて学費が免除されていく仕組みになっているぞ。もちろん、ランカー制度でのランキングは各ギルドや国が注目しており、卒業後の就職に大きく影響を与えることになるから、切磋琢磨して上位を目指すと良いだろう」
「お、すげぇ!ルーク見てみろよ、もう10万ポイント入ってる!面白そうな機能も色々あるぞ?」
先生の話を聞かずにガイは端末を起動させ、既に色々と弄っていた。
それに気付いてか、先生は端末を皆に見えるように掲げガイの方を見て話を続ける。
「この端末はマルチアシストデバイス、通称MADという。既にMADを起動させて確認している生徒がチラホラいるが、君達には生活費として最初から10万ポイントが配布されている。そして、ホーム画面上部に表示されている大きい数字が現在のランキングでその下の小さい数字が所持ポイントだ。ランキングは試験の評価を元に算出されているから各々確認しておくように。では、ここからの進行は別の先生に代わる」
そう言うと入れ替わりで女性の先生が壇上に立つと、スクリーンの映像の内容も変わった。
「では、ここからは少し細かい話になります。我が校にも色々と禁則事項等のルールが多々あります。全部説明すると長くなるので省きますが、MADの中に校則のアプリがあるので目を通しておいてください。次に修学カリキュラムについてですが、我が校ではクラス分けが存在しません。MADで授業スケジュールを確認し各々が受けたい授業の時間に指定教室に向かって受けてもらいます。基本的に授業を受けるも仮想ダンジョンに潜るも自由に過ごしてもらって大丈夫です。ただ、特にノルマや必須科目はないですが、年に3回の長期休暇前に試験がありますので、ある程度の授業は受けておくほうが”後々の事を考えれば”良いでしょう。点数が低く赤点が出た場合は、補習カリキュラムが終わるまで長期休暇には入れないので注意してください。私からは以上です」
そこまで言い終わると、また次の先生へと代わる。
「えー、生徒指導部から一点。寮についてですが、この後それぞれのMADに自分の部屋の番号がメッセージにて届きますが、女子寮と男子寮と別れています。くれぐれも互いに違う寮に出入りすることの無いようにお願いします。禁則事項になりますので、重い厳罰を下すことになります。基本的に何かあれば3年生の寮長か職員に伝えてください。以上です」
先生が壇上から降りると体育館の照明が明るくなり、入口の扉が開く。
「これにて入学式を終了します。良い学園生活を!」
入学式が終わりそれぞれが退出していく中、ルークがMADを起動させると一件のメッセージが届く。どうやら、先ほど言っていた自室の番号が届いたようだ。
「ねぇ!リンク交換しよ!」
急にルークとガイの後ろからララが現れると、二人の間に割り込んできた。
「ん?リンク?なんだそれ」
「ルーク、下の手帳アイコンのとこのやつ押してみ?」
ガイに言われるまま、ルークはMADの画面下にある手帳のアイコンを押してみると学生証のカードといくつかの項目が表示される。
「その項目の中の、リンクってとこ押して一番上の追加ってとこに相手の学生証番号いれると、その相手とのメッセージが解放されるんだってさ!私はもう何人か交換したよ」
思っていたよりララはコミュケーション能力が高いらしい。既にコミュニティを広げているのには、ルークもガイも素直に驚きつつもリンク交換を済ませる。
「ねぇねぇ!この後、特に予定ないなら寮に荷物置いてから校内色々見て回らない?さっき校内マップ見たけど、結構色々あるみたいだよ!」
「俺は空いてるけど、ガイは?」
「俺も大丈夫だぜ!荷物置いたら、噴水のある中央広場で集合しよう」
三人は予定を決めるとそれぞれの寮に向かう。男子寮と女子寮は別々の場所にあり、少し離れている。途中でララとは別れ、ルークとガイは男子寮の前に来ていた。
「でけぇ……」
寮を見てガイが呟く。全校生徒1800人の内、最低でも半数が入れなければいけない寮なのだから、当然建物も大きくなる。
二人が見上げていると後ろから声をかけられた。
「その反応は君達も新入生だね。僕は男子寮の寮長をしている3年のハルナだよ!よろしく」
振り返るとそこに居たのは、肩にかかる程度に襟足が伸びた淡い青色の髪色と薄い緑の瞳、前髪をヘアピンで止め、丸眼鏡をした細身で低身長の先輩だった。
見た感じ身長はララと同じくらいかそれ以下に見える。