美琴が扱う力は、古より“祈り”とともに受け継がれてきた特別な術。
それは、戦うためだけではなく、霊に寄り添い、安らぎへと導くための力。
時には、魂のささやきに耳を傾け、
時には、穢れを祓い、
時には、静かに守る
しかしその術は、優しさとひきかえに代償を伴うものでもある。
美琴の祈りは、誰かの心を救うたびに、彼女自身にも静かな痛みを残していく。
力のすべてはまだ明かされていないが――
その“祈り”が、やがて物語を大きく動かしていくことになる。
⸻
【術録抜粋】──古に思考された術の記録──
※すべての術は、かつて存在したとされる巫女 ……様 が思考したものと伝えられる。
※術名には「祈り」が込められており、詠唱と術者の意思が一致したとき、真の効果を発揮するとされる。
⸻
■ 還魂・
効果:未練を残した霊に対して、安らぎを与える癒しの術。成仏を促す。
動作:
術者は片手をかざし、もう片方の手を胸元で祈るように合わせる。かざした手から放たれる気が、霊を包み込み、穏やかに浄化する。
補足:
霊との共鳴が深いほど、術の届き方が優しくなるとされる。痛みを与えることはなく、癒しの中で自然に霊を導く。
⸻
■ 結界・
効果:霊的な加護を展開し、一時的に霊的攻撃や呪いを防ぐ結界を張る。技術によって層を重ねることが可能。
動作:
術者は指先で空中に「結」の一文字をなぞるように描く。その動きに霊力を宿すことで、術者の周囲に赤い膜のような結界が展開される。
補足:
熟練者は絹を折り重ねるように、結界を複層に展開することができる。怨念による物理的攻撃すらある程度防ぐほどの耐久性を持つ。
⸻
◾︎攻撃・
効果:霊力を集束し、指先または掌から放つ小さな霊弾。強い意志を込めることで、威力と射程が上昇する。
動作:
術者は指先、または手のひらを構えることで霊気を集束し、礫として放つ。
補足:
未熟な術者が放つ礫は威力が不安定で、結界に弾かれることも多い。
霊力の性質は術者によって異なり、美琴の礫は紅、悠斗は碧となる。
術の完成度は、術者の精神状態や集中力に強く影響を受ける。
──
■ 強制成仏・
効果:罪深き霊に対して使用される、最も過酷な術。業火をもって霊の罪を焼き清め、強制的に成仏させる。使用には術者の強い精神力と代償を伴う。
動作:
術者は両手を胸の前で下向きに構え、指先で円を象るような形をつくる。この「捕縛の円」内に霊を閉じ込めない限り、術は発動しない。術者の祈りと共に業火が立ち上り、霊を包み込んで焼き尽くす。
補足:
あまりにも苦しみを伴うため、使用は極力避けられる。霊の安らぎよりも「浄化の完遂」を優先する場面でのみ用いられる術。