「お待ちどうさまでした」
軽く息を切らして
「あ?メガネ、なんでそっちから来た?」
「『転移石』を使うとこうなるんですよ。飛んだ座標がどこであれ、ゲート傍に戻されてしまうので、村からゲート近くに飛んで、戻ってきました」
「ごめんね、
「いえ、僕も用事があったので大丈夫ですよ。こう見えても毎日五キロ以上は走ってますから」
そう言えば――
ヒョロついてると思っていたが、意外にマラソンランナー体型なのかもしれない。
「まず、『魔核』が一個銀貨一枚で売れました。ブルースライムは一個銅貨五十枚ですね」
兎田山は、それぞれにお金を並べる。不思議な色のコインだった。
「これは僕の奢りで。ベリとチリィのジュースです」
「ベリ……?」
「ベリは、ストロベリーとブルーベリーの間みたいな味がする実です。村の周辺でよく採れるものです。チリィはオレンジと蜜柑の間のような……甘味は少し強いかもですね」
陶器のコップに並々とジュースが入っている。全体的に淡い紫色だ。
口に含むと、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。
「甘くておいしい……!爽やかなのに、凄く飲みやすい!」
「……確かに旨い」
「推しから生ボイス頂きました!旨い!」
「うるせえ、これ、幾らだったんだよ!」
兎田山は指を三本立てた。
「器は後日返すと言ったので、純粋なジュースの単価は銅貨三枚ですね」
「は?安くねえか?」
「『魔核』がそれなりに高いんですよ。こちらの世界の人も、『スキル』がないと魔物は倒せないんですって。だから冒険者や、我々『
異世界人が処理できなくなった魔物が溢れてゲートが生まれたのか――それとも全く別の理由なのか。
『
「十二時ですね、帰還しましょう。初日に無理すると辛いですよ」
「明日は早めに潜るわ。紫里くんもそれでもいいかしら?」
「いいですよ」
ゲートまでそう遠くない。
改めて、ケロッとしている兎田山の凄さを感じながら、抱えているツルハシの軽さの有難みを感じる。
ゲートを出てから、兎田山と連絡先を交換したのだが、二人とも疲労で黙りがちだった。