いよいよゲートの前に立つ。
ゲートは黒く蠢いていて、その先は何も見えなかった。
「おい、待ててめぇ!そんなスタスタ……」
「行きましょう、
犬丸は、そんな猫宮の護衛として育ってきた。躊躇する場合ではない。
少し加速して、一気にゲートに飛び込む。
目を開けたそこは、開けた平原だった。
「は?ここが異世界?」
心地よい風、暖かい日差し。見渡す限り、背の低い草が広がる場所。
「あっ言い忘れてました、
「全然人居ねぇな……」
「そりゃそうですよ、学生組も帰宅早々に潜りますし、大人は夜でも入りますからね」
ぴょんぴょんと、謎の球体が飛び跳ねているのが見えた。
駆け寄った猫宮が躊躇いなく、ツルハシを鋭く振り下ろす。
「は?!お嬢……?!」
「おおっスライムですよ、犬丸くん。カッコイイポーズで倒してください。僕の心の中の犬丸くん☆しゅてきフォルダに入れときますんで」
「てめえはその気持ち悪い言語をどーにかしろッッ、メガネへし折んぞ!!」
「今のツッコミはいい感じですねー」
兎田山にイラつきながら、犬丸もスライムにツルハシを突き刺した。
ツルハシの先端が、ぶよぶよしているスライムに絡んで引っ張られる。
「お二人とも、魔物には『魔核』があります。ネバネバして取りにくいですが、スライムの場合は『魔核』を取り出さない限りまたくっついて増えるので、頑張って取り出してくださいね」
スライムを倒すこと自体は、すぐに慣れた。
問題は『魔核』を取るまで、不快なネバネバを切り開くことだ。
猫宮は無心にスライムを倒し続けていて、あっという間に『魔核』が二十個ほどになっている。
「そろそろ、アイテムボックスの練習をしましょうか」
「練習?」
『魔核』を奪ったスライムの死体が猫宮と犬丸の傍でくたりと広がっている中、兎田山が説明を始めた。
兎田山の足元には何も無い。そして知らぬ間に杖ではなくツルハシを持っていた。
「お二人共にアイテムボックスのレベルがゼロでしょう。少しずつ、物を増やしてレベルを上げるしかないんですよ。そうでないと、この素材ずっと手で持ち歩きます?」
「あ、そうか……」
説明役からは、荷物は持てるようになるからバッグなどは要らないと言われて手ぶらできている。
荷物が持てるようになるとは、アイテムボックスを育成した上での意味だったのだ。