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第6話 チュートリアル男子③

「景気がいいねぇ、防具と盾は少し安くしてあげよう」

「よっ!猫宮財閥!」


 猫宮ねこみやを試着室に入れて、おおとりはいくつかの小さなバックラーを渡す。


小桜こざくらが今試着してる防具は幾らくらいだ?」

「五百万から六百万ってとこだ」

「ガチでぼったくってんなら許さねーぞ」


 兎田山うだやまは杖の反対側の持ち手で、犬丸いぬまるをつっついた。軽率に推しに触る度胸が無い。


「何すんだメガネ!」

「そこはメガネザコでしょう犬丸くん。まぁそれは折をみてとして、鳳さんは生産職です。他の戦闘職の『放浪者ノーマッド』から素材を買い取って、武器武具を作ってらっしゃいます。つまり原価が高いんですよ」


放浪者ノーマッド?」

 鳳が電子タバコを取り出して、煙を吐く。

 説明はすっかり兎田山に丸投げたらしい。


「エンドゲートに潜る資格のある僕らの総称ですよ。政府からは探索者と呼ばれていますが、はっきり言って原因の元も分からずにフラフラしてますからね。ゲートもオリジンゲートが正式名称ですが、僕らは終わらないエンドゲートと勝手に言っています」

「俗称ってやつか、現場の」

「見てみてー!これどうかしら」


 制服の上に防具と鳳チョイス盾を持った猫宮が出てきて、思わずといった様子で犬丸が写真をとる。


「すっげぇ似合ってる小桜!異世界ものの勇者見てぇだな」

「すごい秒でデレる推し……!クールで傲岸不遜な普段からは見えないデレ!!!」

「うるせえ、メガネ!!!話したらぶっ殺す!」


 続いて、猫宮が犬丸の防具を選び始めたが、兎田山はそれを止めた。


「猫宮さんは女性ですし前衛だからオススメしましたが、この先もっとレベル上げに苦しんで上位の魔物と戦うときにアイテムや防具が必要になります。推しをガッチリと守る防具――なんなら僕がなりたいところですが――は今回は見送りましょう」

「お金はまだまだあるわよ?」

「初期装備でこのお値段なんです。猫宮財閥といえど、毎度何千万も払い続けるのは大変でしょう」


 放浪者ノーマッドとなれば、政府はその家に名誉とコネを用意してくれるが支払いは助けてくれない。課金のさじ加減は難しいのだ。

 高いと言われたが、このツルハシは鳳が軽量化を付与エンチャントしてくれている。


「わかったわ、一番詳しい紫里くんが言うんだもの。信じます」

「小桜がそう言うなら俺はそれでいい」

「毎度、しめて千二百万!」

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