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第5話 チュートリアル男子②

  猫宮ねこみやはおずおずと、小さな盾などを触る。

 兎田山うだやまは、眼鏡をずいっと上げるとステータスオープンと唱えた。


「お二人共、ここはゲートのすぐ側なのでステータスが開きます。『ジョブ』を見せてください」

「どーやんだよ」


「おや、説明役から何も聞いてないようですね。ステータスと言えば、自分だけにステータスが。ステータスオープンと言えば皆に見えるようになります」


 兎田山は自分の前にある、ゲーム画面のようなウインドウを閉じる。


「閉じる時は、閉じろと念じればこのように消えます。さあっ唱えてください、爽やかに!」

「爽やかさは必要ねーだろ!いちいちうぜぇなてめえ!」

「ステータスオープン!」


 兎田山につっかかる犬丸いぬまるを無視して、猫宮は元気よく唱えた。

 ウインドウが開き、

名前  猫宮小桜。Lv0。

体力100

魔力80。

ジョブ『騎士』

アイテムボックスLv0。

スキル 『雷鳴刃サンダーアタック』Lv0。

と表示される。


「ほほう、騎士ですか。まさかの前衛職でしたね。盾と軽い防具にしましょう。さぁさぁさぁ犬丸くんは?」

「さぁさぁうるせえ!ステータスオープン」


 犬丸はキレ気味に言ったが、ウインドウは現れた。

 名前  犬丸慧士。Lv0。

体力120。

魔力70。

ジョブ『狙撃手』

アイテムボックスLv0。

一閃射フラッシュショット』Lv0。


「この、技みたいなのがスキルなの?」

「そうです、誰でも初期装備として一つは『スキル』があります。アイテムボックスはほとんど全員が持っていますよ。大事なのはレベル上げです。初期の体力魔力はみーんなしょっぱいもので、こんなごっついプレートアーマーなんかはLv0では装備したら動けません」


 兎田山は、さっき犬丸が見ていた重装備をつつく。 鳳が、素材をいじりながらウンウンと頷いた。過去に購入して文句でも言われたのかもしれない。


「防具はわかったけどよ、肝心の武器はどーすんだよ。俺は狙撃手なんだろ。銃は」

「レベルゼロには武器なんて早いんスよ。ひのきの棒で充分――とはいえさすがに棒は無力なんで、ツルハシを買います。おおとりさーん!」

「はいよ、ツルハシ二つ」


 片手で持てるサイズのツルハシが、テーブルに並べられる。

 石を破壊するには良さそうだが、モンスターと戦えそうかといえば、ふざけた代物だ。


「こんなもんで、倒せんのか?」

「最初のレベルあげは、ひたすらスライムぶっ叩き祭りなんで、刺さればいいんですよ。慣れるとゼリーみても突き刺したくなりますよー!」

「なってたまるかッッ」

「でも、ないと困りますよ?」


 犬丸は顔を顰めた。

 ふざけた眼鏡ヤローではあるが、ゲートの向こうに行った経験値が高くそこに限っては先輩だ。


 それに兎田山は杖を持っている。犬丸たちと違ってレベルが高いからだろう。

「じゃあ、ツルハシをまず二つと」

「毎度ー!四百万ねー」

「は??高ッッ!!」

「だから高いって言ったでしょう」

「限度があるわッッ!」


 猫宮がツルハシを手に取る。

 先端が鋭利で、かすかにギザ歯が入っていた。その辺が農具店のツルハシとは違う。なによりやたら軽い。


「じゃあ、買わせていただくわ。ブラックカード使えるかしら」

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