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第4話 チュートリアル男子①

「兎田山、新人と知り合いか?外ではエンドゲートの事話すなよ」

「分かってますよー。あーあ、推しとは直接関わりたくないスタンスなのになー」


 おおとり秋康あきやすは自衛隊の所属ではあるが、実際はこの政府秘匿ゲートの担当だ。

 生産職のクラフターで、『付与エンチャント』の『スキル』も持ち、ゲート傍の店で顧客の依頼をこなす。


「じゃあ、後は任せたぞ〜。そろそろお前もパーティ組めよー」

「オケオケ、じゃっ行きますよー!」

「待てやッッ!!なんでてめーがここに居るんだよ!」


 猫宮ねこみや小桜こざくらは、そっと兎田山の腕に触れた。

「私も知りたいわ。いつもお醤油や油やお味噌を貸してくれる紫里ゆかりくんがなぜここに?」

「お嬢、そんなやつに触るな!!そんで、知らん間になんで調味料そんなにそいつに借りてんだ?!俺に言ってくれ!」


 兎田山は、筒状のバッグから杖を取り出した。先端に丸い球体が付いている、ファンタジー感がたっぷりの杖だ。

「ここに入れる人は限られてる。政府の承認を得て出店してる人間か、政府から派遣された『ジョブ』持ち鑑定で、水晶が光った人!通行パスがなきゃこんな国家機密の中に入れません。つまりお二人も僕も、選ばれし戦士。ちなみに僕は案内役です。きびきびとチュートリアルしていきますよー」


「そんな山登りみたいな服装で大丈夫なの?」

「お二人こそ、制服で戦う気ですか?パックリいかれますよ。嘘ですけど」

「これから装備を買うんだよ!!ナチュラルに嘘挟むな!」

 学校の制服姿の犬丸と猫宮を一瞥して――犬丸に三秒ほど時間を割いて――上を見あげた。


「じゃ、防具屋に行きましょうか。言っときますけど高いですよ」

 いくつかの店を素通りしていくと、兎田山は親しげに声を掛けられる。

 途中には、幾つものビジネスホテルのような建物も増えていた。


 犬丸は切れ長の目にうさんくささを漂わせて、そんな兎田山を見る。

「随分慣れてんな、メガネ。お前いつからゲートに潜ってる」

「そろそろ二年目ですね。犬丸くん、僕のことは貴様とかモブとか言っていいんですよ」

「キメェ」


 ペットボトルの水を五千円で売る店を通り抜け、バリケードの山が近づく。

 『ジョブ』を持つ、戦えるメンバーが異世界の繋がった近辺の大型魔獣を倒したおかげで、ここ数年は安全になった方だ。


 バリケードすれすれの小さな店に、兎田山は迷わず入った。


「いらっしゃ――どうした兎田山。杖に何かトラブルか?」

 先程、犬丸と猫宮を案内してきた鳳が顔を上げる。

 手には、謎の毛皮と骨。


「いーえー、ルーキーの方々が防具をね」

「マジか、ぼったくられるのにな。いらっしゃい」

「ぼったくりって自分で言うか?!普通」

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