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第2話 見てはいけないものをお見せしましょう

 兎田山うだやまは本を諦めて、301号室の自室に入った。

 推しと家が超近距離。サボった犬丸いぬまるを尋ねた生徒会長の四狼しろうが……あんなこんな。想像するだけで、推し活が捗る素敵情報である。せっかく入れた推しの部屋、もっと観察すれば良かった。


 元々少年ジャムプ作品でも正ヒロインがいようと、妄想待ったナシなので腐男子兎田山は挫けないのだ。


 時間からは早いが、今夜のことを考えると早目の準備が良さそうだ。

 難しい料理はできないが、肉じゃが、カレー、ホワイトシチューをローテーションしながら、スーパーのカツを卵でとじたりするくらいの腕である。


 高校生男子としては及第点だろう。

 冷蔵庫からシチューを取り出して、オンライスで食べる。


 それから兎田山はひきわり納豆をご飯で巻いて、作った納豆巻は夜食用だ。追加でふりかけご飯をおにぎりにして、大型水筒にたっぷりと水を入れる。


 オシャレにサンドイッチと洒落こんだ時もあったが、腹持ちしない上に手作りのどこかで失敗したので、それからは俄然お米支持派になった。


 兎田山は、シャワーを浴びて、アウトドアに出かけるような服装に着替えた。今夜は新人教育だと聞いている。

 装備を確認すると、アラームを付けて仮眠に入った。

 兎田山紫里うだやまゆかりには、大きな秘密がある――。


********


 三時間後、兎田山は動き出した。

 夜食と水筒が入ったリュックに、剣道部のような筒のバッグを背負う。

 学校とは反対側へ徒歩十分。


 そこには、ショッピングモール建設中の立て札。

工事中のシートに覆われた巨大なアーケードを潜る。警備員に通行パスを見せると、無言で校門ほどの分厚い入り口が開けられた。


 そこは、整備された道路に食べ物の露店、武器屋、防具屋と怪しげな店が立ち並ぶ。

ちょいちょいと店を冷やかす兎田山に、顔なじみの店長たちが声をかけてきた。


 ここは、政府が極秘裏に設立した建物。

 五年前、突如生まれた闇のゲートは異世界に通じ、魔獣が溢れて政府を震撼させた。


 ゲートの魔獣には、自衛隊の攻撃も通じず。

 被害は三百名以上に及び、その最中に千人に一人の割合で異世界に適合する『ジョブ』と『スキル』を持つ人間が発見された。


 それから、自衛隊、警察官などから資格を持つ人間をあぶりだしたが適合者は少なく、一般人にも秘密裏に検査が進んだ。


 兎田山は、そんな適合者の一人である。


「兎田山〜新人連れてきたぞー」

おおとりさ……ん??????」


 声をかけられて、ぐるりと振り向くと――そこには先程見た顔が。


「なっななななぜに推しと猫宮さんが?!」

「なんでてめーがここにいやがる!!」


 一般人が見てはいけない秘密の扉の先で、三人は再会した。

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