「くちばしおんな」とは
その名の通りくちばしを生やした女の怪異。
他人の部屋に忍び込んでは
持ち物を奪い去る習性があり
持ち物を奪われた人は毎日、同じ時間
身体のあちこちに鋭い刃物を
小刻みに何度も何度も
突き立てられるような苦痛に見回られることになる。
それは「くちばしおんな」が盗み出した品物を
その鋭いくちばしでつつき回し、呪詛として
被害者に苦痛を送り付けてくるせいだと言われている。
この事態に手をこまねいていると
十日もたたないうちに「くちばしおんな」は
盗品をくちばしで突き破り
壊してしまうという。
それと同時に持ち主の命も絶たれてしまう、
というのだからたまったものではない。
この災厄から逃れる方法はただ一つ。
他人からこっそり盗み出してきた物を
「くちばしおんな」に差し渡し
自分の持ち物を返してもらうことだ。
つまり、他人に呪いを押し付けるわけである。