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第10話

 こうして舞踏会で起きたレオ兄様暗殺未遂事件は無事解決を迎え、縄でぐるぐる巻きにされた暗殺犯は地下牢へ連れて行かれたのであった。


 レオ兄様が私の頭をポンポンする。


「ミアはお見事であった。それにヒイロとアオイの二人も。二人は何か武術の心得でも?」


 レオ兄様の問いに、アオイとヒイロが答える。


「はい。国王陛下。私たち、実は冒険者なんです」

「これが私たちの冒険者カードだ」


 ヒイロがレオ兄さんに冒険者カードを見せる。


「ほお、A級か。すごいな」


 レオ兄さんは感心したように頷く。


 この国の冒険者のランクはS級からD級まである。


 A級ということは上から二番目なのでかなり強いに違いない。まだ若いのに。私とそう変わらないんじゃないかな。


 いいなあ。私も冒険者になりたいよ~!


 私の愛読している雑誌『月間冒険者』によると、最近では十代の冒険者も増えてきていて、十四歳とか十二歳でモンスター討伐やダンジョン攻略で名を挙げる人も増えてきているのだという。


 そういう話を聞くと、正直言って少し焦る。


「もし良かったら、二人ともこの城に数日滞在してはいかがかな? 丁重にもてなそう」


 上機嫌になったレオ兄さんはこんな事を言い出した。姉妹は顔を見合わせる。


「遠慮しなくていいぞ。命の恩人には、最大級のもてなしをするのがつとめだ」


 白い歯をきらりとさせて笑うレオ兄さん。

 嘘だっ。命の恩人だからってのは建前で、本当は美人だからだろう。


 アビゲイル義姉さんのほうをチラリと見る。てっきり反対するかと思いきや、義姉さんは特に気にしていない様子で微笑んだ。


「そうね、いいんじゃないかしら」


 大人だなー、義姉さんは。私だったらぶん殴ってやるのに。


「では言葉に甘えてそうしましょう、姉さん」

「ああ」


 にっこりと笑うアオイに、ぶっきらぼうに答えるヒイロ。


 この二人、髪型がロングヘアーかセミロングかという違いだけで顔はほとんど同じなんだけど、どうやら性格はだいぶ違うみたい。


 やがて二人はメイドに案内されて客室へと移動した。


「じゃあ、私たちも帰ろうか」


 私はモアの顔を見た。


「うん、モアも疲れちゃった」


 少し眠そうな顔をするモア。その顔もたまらないっ……。

 よし、今日はモアをぎゅうっと抱きしめて眠っちゃおうっと。

 私とモアも部屋に戻ることにした。


「なーご」


 部屋に戻ると、いつものように飼い猫のムータが飛び乗ってきて私の胸にすりすりする。女の子のおっぱいが好きなんだこの猫は。


「ムータ、いい子にしてたか?」


 ムータを撫でた俺私動きにくいドレスを脱ぎ部屋着に着替えようとした。

 が、鏡の前であることに気が付き、全身が凍りつく。


「ない。モアから貰った髪飾りがない!」


 部屋の中をウロウロと歩き回ったけれど、どこにも花の髪飾りは無い。


 どこで落としたんだろう?

 今日の記憶を懸命にたどる。

 舞踏会の途中までは確かにあったはずだ。

 とすると……きっとあの犯人を追いかけた時に落としたんだろう。


 せっかくモアに選んでもらったおそろいの品なのに!

 どうしよう。明日爺やに頼んで探してもらう?

 いや――。


「やっぱり自分で探そう!」


 いてもたってもいられなくなった私は、下着の上から慌ててガウンを羽織り、部屋を飛び出した。


 うわ~ん、せっかくモアから貰った宝物がー!!


 早く見つけないと!



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